自治体が旗を振り、地域全体が最先端の技術を使って盛り上げる|山口県美祢市

デジタル住民票NFTを利用して、市の関係人口創出に挑む山口県美祢市。
AIやメタバース、ふるさと納税などの返礼に品にNFTを採用したり、最先端の技術を積極的に取り入れています。

今回はそんな山口県美祢市のデジタル推進課に勤める竹内さんにお話を伺いました!

目次

山口県美祢市のデジタル住民票NFT

ーーー(編集部)本日はよろしくお願いいたします!まずは竹内さんの経歴を教えてください。いつ頃からWEB3やNFTに関係した仕事をされたのですか?

竹内さん

私が入庁したのは30年ほど前で、長く電算システムなどの担当をしていました。近年では、財政課において予算編成の業務に従事する傍ら、自治体のファイナンスの在り方について調査・検討を行い、基金の運用手法の見直しなど取組を進めてきました。
そこから、令和3年度に新しくできたデジタル推進課に配属され、NFTなど行政におけるデジタル技術の活用に関する仕事を担当することになりました。

WEB3については、最初はあまり知識がない状態からのスタートだったのですが、市民の方からの提案もあり、いくつかWEB3に関連する事業を立ち上げています!

ーーー(編集部)ありがとうございます!続いて山口県美祢市の魅力や特徴について教えてください!

竹内さん

美祢市の主な産業は昔から鉱工業で、砕石やセメントの原料となる石灰石の採掘が盛んな市で石灰石を取る工場はテレビなどのメディアによく取り上げられています。
それと市における観光部門が大きく、自治体としては珍しい観光の特別会計があるくらいの規模で色々な施策を行っています。

そういった観光業や鉱工業が盛んな反面、少子高齢化や衰退する市内小売業への対応は大きな課題です。

ーーー(編集部)山口県美祢市で行っている「デジタル住民票NFT」について教えてください!

竹内さん

美祢市のデジタル住民票は、山形県西川町の次に販売されたデジタル住民票NFTです。
こちらを保有していると、NFTによって美祢市のデジタル住民であることが証明され、関係人口として美祢市を応援していただくことが可能です。
ホルダーの方は、美祢市のオンラインコミュニティにも参加でき、コメント等を通じて市の取組に参画できます。

竹内さん

また、鍾乳洞「秋芳洞」が通常1,300円で入れるところ、入場が無料になるという美祢市ならではの特典を付与しています。

ーーー(編集部)ありがとうございます!「デジタル住民票NFT」やふるさと納税NFTなど、WEB3・NFTの取り組みを始めることとなったきっかけはなんですか?

竹内さん

そもそも美祢市としては、WEB3やNFTの取り組みに対して主体的に動いてはいなかったのですが、きっかけとなったのは東武トップツアーズの方が行っていたメタバースのセミナーに参加したことでした。
そうしたセミナーの中で、前日に行われていた山形県西川町のデジタル住民票NFTの販売に関して熱く語られていたんです。

私もその熱い想いを聞いて「これはいける!」と思い、すぐに市長に掛け合いました!

竹内さん

デジタル住民票の取り組みに関しては、デジタル推進課がシティプロモーションの所管課ですのでその観点からWEB3・NFTを使用した施策として、まずは、メディアに露出する。というのが目的の一つとしてありました。

デジタル住民票NFTの取り組みの裏側

ーーー(編集部)デジタル住民票NFTを行う上で、市役所の職員さんや周りの方のWEB3・NFTに関する知見はどのくらいありましたか?また、知らない方が多いのだとしたらどのように説得しましたか?

竹内さん

この度の取組は、デジタル推進課主導の下NFTを発行して販売することが主でしたので、庁内が一丸となってWEB3の知識を理解してもらう。全体でリテラシーを高めていくというようなことは、あまり必要ありませんでした。

竹内さん

ただ、当初予定していたシティプロモーションの施策を行う予算を、急遽デジタル住民票NFTに変更したのでプロポーザルを出した瞬間に議員に説明を求められたり、一般質問に取り上げられたりしました。
市としても、一般質問で取り上げられたことによりNFTやWEB3について各職員連携して勉強し、議員の方にも説明できたのでWEB3やNFTの知識の浸透や理解が深まったと思います!

今後の展開に繋げやすくなったという意味では、一般質問に取り上げられたことが重要な点だったと感じます。

ーーー(編集部)デジタル住民票と言うと、どうしても「既存の行政サービスが絡むのではないか」といった意見が出てくると思うのですが、美祢市ではどうでしたか?

竹内さん

その意見は確かにありました!
今の住民票がデジタル住民票になるのか?という意見もあったり、名称を美祢市デジタルパスみたいにすれば勘違いもなくなるのでは?という意見も出ていました。
しかし、後者ではインパクトとして弱く、行政が行うという取組の色が薄れてしまうと考えました。

美祢市に仮想の市民になってもらう、というイメージは「美祢市デジタル住民票NFT」という名前にしたほうが、認知や理解は進むだろうという想いで「デジタル住民票NFT」として進めていきました!

ーーー(編集部)ここまでデジタル住民票NFTを進めてきて、感じた課題や改善しなくてはいけないところがあれば教えてください。

竹内さん

わかっていたことではありますが、やはりデジタル住民票NFTを購入する人はNFTの愛好家が多いということなんですよね。
実際2,000枚販売したんですが、実人数で言うと一次販売時は350人程だったんです。1人で10枚や20枚、購入している方もいました。

そこからわかるように、美祢市に貢献したいとか、観光しにいきたいという動機で購入された方が一定数いる一方、デジタル住民票を保有して値上がりを期待するという人も多いんだろうなと…
私たちが願う本当の意味でのデジタル住民票を作ることは、こちら側で打てる施策の質も含めて改善点が多くあるため、まだまだ先になるのかなと思いました!

竹内さん

ただ、今回のデジタル住民票NFTに関しては、シティプロモーションの観点から行っているので、その面で言うと従来のものよりもかなり効果的ではあったのかなと思います。

これまでは、チラシを配ったり広告出したり等、一瞬のプロモーションで終わってしまうものが大半ではないかと感じていましたしかし今回のデジタル住民票は、そのNFT自体に価値があるので、手放す人はいません。
加えてデジタル上でずっと繋がれているので、こちらから情報を発信し続けられるという利点があり、新しいプロモーションとして活用できるなと思っています!

デジタル住民票にとどまらない地域活性施策

ーーー(編集部)デジタル住民票NFTは、シティプロモーションの一環として行っていると思うのですが、一旦それを抜きにしてこのデジタル住民票であげたい成果などがあれば教えてください!

竹内さん

現在デジタル住民票NFTには、美祢市を訪れていただいた方に観光施設の利用割引の特待がついているのですが、やはりそれだけでは観光促進や移住先になる選択肢にはつながらないというのが現状です。

ただ美祢市では、単にNFTの価値だけで終わらせるデジタル住民票では意味がないし、勿体無いと思っています。
市民の方でかなり熱意のある方がいらっしゃるので、市全体で一丸となり、新たな取り組みとしてアップデートしていこうと考えています!

ーーー(編集部)デジタル住民票では、最終的に関係人口になってもらうという目標があると思いますが、実際に山口県美祢市に来てもらうために何か施策を行っていたりするのですか?

竹内さん

美祢市の売りはなんといっても秋吉台や秋芳洞の大自然を感じられる観光地を有していることだと考えています。観光客に対して、AIによる観光案内をしてくれるという取り組みを行なっており、行政による観光案内などの堅いものではなく、対外的にもっと親しみやすい案内を音声で行う取り組みです!
「ミネドン」という市のキャラクターを使用して「AIミネドン」という名前で行なっています。

実際に興味があるけど、どのように観光すれば良いかわからない。観光する場所が本当にあるのかどうかわからない。という方に有効活用していただきたいなと考えております!

ーーー(編集部)関係人口創出や、税収の向上などはどの地方でも問題視されていると思います。美祢市の企業と連携して、市全体で取り組みをすることは考えているのですか?

竹内さん

もちろん考えております。そもそもWEB3の施策というのは、自治体が主体でやることがなかなか難しかったりするとんですね。
ただ、市が仲介したり、バランスを取る、後押しをする。この辺りは市がやった方が良い場合が多いと思うので、積極的に絡んで行くのが良いとは思うんです。

なので、市が旗を振り、地域の方がメインで動くのが理想ではないかと、この形で効果的な施策を打てるようになればと思って、現在、取組を進めているところです。

ーーー(編集部)最後に宣伝したいことや、これからのWEB3・NFTに対する想いがあれば教えてください!

竹内さん

1つ目はAIミネドンですね!たくさんの方に一度使ってみてほしいです!
そして美祢市の観光スポットや観光案内など、音声案内で気軽に相談できるので、是非活用してください!

竹内さん

2つ目は、デジタルを通じた市政運営に力を入れている市だということです!
美祢市のデジタル推進課は、市の事務事業についてデジタルを絡むものは、ほぼ全てに関わっています。ですので、地域振興、シティプロモーション、仕事の進め方などあらゆる面で、柔軟かつ積極的にデジタルを活用している地域だと考えています。

その中で、Web3に関連した施策の展開は象徴的なものになると考えてます。

そんな認知がこの取り組みや、インタビューを通じて皆さんに広がっていければ良いなぁ…と。
そう考えています!

ーーー(編集部)本日はありがとうございました!今後もよろしくお願いいたします!

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