現代版米本位制「石高プロジェクト」誰かのためになるDAO型ソリューション

人口約6,000人ほどの福島県西会津町では、昨年より「石高プロジェクト」というWeb3✖︎お米のプロジェクトに取り組まれています。
”石高”という安土桃山・江戸時代に行われた土地の値打ちを表す方式を現代に復活させる、これまでにない先進的な取り組みについてプロジェクトの運営であり、西会津町地域おこし協力隊の長橋幸宏さんにお話を伺います。

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Web3,0と現代の米本位制「石高プロジェクト」

ーーー(編集部)本日はよろしくお願いします!改めて石高プロジェクトについて教えてください!

長橋 幸宏さん

自分たちの愛する地域を未来に残すために持続可能な農業に取り組む農家さんを、コミュニティで支えていく、その仕組みづくりをしようとしています。ブロックチェーンを基礎にしたトークン設計で、“故くて新しい“農業を支える「文化」を実現したいと思っています。

ーーー(編集部)この石高プロジェクトが生まれたきっかけや背景について教えてください!

長橋 幸宏さん

石高プロジェクトは、昨年2022年の冬ごろから構想が始まったプロジェクトです。西会津国際芸術村のディレクターを務める矢部佳宏さんと西会津に関わっていた東京大学・慶應大学の教授を務める鈴木寛先生らが「未来型地域のあり方」について話していたのがプロジェクトの発端です。
西会津の主要産業である稲作をどうにかしたいと話していたところ、、、「”石高”という仕組みが昔はあった」という話が出ました。

長橋 幸宏さん

それを契機に、西会津のCDO(最高デジタル責任者)である藤井靖史さんに「現代に石高制があるとすれば地域通貨と通ずるものがあるのではないか」という相談を行いました。

ーーー(編集部)既に多くの有識者が関わっているんですね!

長橋 幸宏さん

そして、現在石高プロジェクトの戦略的パートナーである株式会社Questryの内田善彦先生にこれらの構想を伝えたところ、今の骨組みとなっているシステムの設計を提案していただきました(1週間で)!
その後、それを実現するため各方面に相談し、結果的に町の事業として行う形で、石高プロジェクトが始動しました。

ーーー(編集部)関わっている方々の経歴が凄まじいですね…!かなり早いペースで進んでいる様に感じましたがスピード感はいかがですか?

長橋 幸宏さん

おっしゃるようにかなり早いスピード感で石高プロジェクトは進んできました。2022年の冬に構想が始まり、2023年の8月にはモバイルアプリ「石高プロジェクト」をリリースしました。

ーーー(編集部)構想からプロダクトリリースまでかなり早いですね!凄いスピード感で石高プロジェクトは進められていたと思いますが、設計中に感じた課題や難しい点はありましたか?

長橋 幸宏さん

西会津プロジェクトチームの面々は、他の仕事もあり忙しい方も多く、Web3の知識やシステム開発の経験が充分にあるわけではないので、さまざまに苦労はありましたが何とかリリースまで辿り着きました。

ーーー(編集部)そのスピード感でやられていたら確かに一言では語れないくらい難しさありましたよね。
長橋さんはもともとWEB3領域の事業などに携わっていたのですか?

長橋 幸宏さん

私はWeb3事業などには全く携わってはいませんでした。担当がデジタル推進だったので、NFTが地域活性化で使われていると話題になっていた際に、調べていたくらいでした。
この石高プロジェクトでは、私はプロジェクトマネージャーとして動いていましたが、当初は「要件定義って何ですか???」というレベルから始めていました。

ーーー(編集部)そうだったんですね!そのレベルから始めてよくこのスピード感で形作れていけたんですね!凄いです!

長橋 幸宏さん

私自身もプロジェクトもまだまだ、のび代だらけです。笑
まずはアプリリリースをすることが目標で、やりながら改善していくことにしています。そういった部分もコミュニティで共有して楽しみながらやっていければと思っています。

実証実験としての1年|大きな収穫と課題

ーーー(編集部)NFTやWEB3について見識が深くない中で進められたと思いますが、西会津町でこのプロジェクトを実行するための説明・説得をするときには難しさはありましたか?

長橋 幸宏さん

もともと西会津町は町の事業として挑戦的な取り組みを行ってきた風土があったことや、藤井さんが町の最高デジタル責任者だったこと、そして、参加する農家さんが大変協力的であったことなど、さまざまな条件が重なったために、このような取り組みをチーム一丸となって進行できています。

ーーー(編集部)西会津町が様々なチャレンジする町だったんですね!石高プロジェクトのこれまでの進捗はいかがですか?

長橋 幸宏さん

現在(11月16日当時)は、お米の収穫が終わり、これからNFTが配布されるというところです。東京でのイベントなどの開催も終え、1シーズン目がひと段落しようとしているところです。
そして、いずれプロジェクトを運営していく民間組織を作っていこうと動いているところでもあります。

ーーー(編集部)より将来に向け動かれているんですね。コミュニティの人数やNFTの売上は実際どうでしたか?

長橋 幸宏さん

石高プロジェクトでは、現在Facebookグループでコミュニティを運営しているのですが、コミュニティ人数は400人程度ですね。
「米ボード」の売上としては当初の目標の1/5程度になっています。

ーーー(編集部)そうだったんですね、、ここまで石高プロジェクトを進めてきた感じた課題や難しさはありますか?

長橋 幸宏さん

スタートの今年度は実証実験として、全体を通してのバグ出しや課題の洗い出しを目的としています。やってみて見えてきている主な課題としては、2つあります。
1つ目に、売上に直結する課題として、決済に関する部分です。
「米ボード」の決済が銀行振込のみであったり、買い物かご機能がなかったりなど、購入者にとって、購入ハードルが高くなってしまっていました。

長橋 幸宏さん

当初からクレジットカードなどキャッシュレス決済を検討していたのですが、導入が間に合いませんでした。。
米ボードという商品の特性上、3,000円分の決済をするがもしかしたら3,000円分のものがもらえない可能性があり、それが導入が難しい理由でした。しかし現在は事業者も見つかり、クレカ決済の導入に向けて進めているところです。

長橋 幸宏さん

課題の2つ目としては、アプリとしてのUI/UXです。
上記でもご説明した様に、ユーザーに対して一般的なアプリのようなサービスを提供することが難しかったです。この部分に関してはコミュニティで共有しフィードバックをいただきながら少しずつ改善しています。

ーーー(編集部)やはり様々な課題があるんですね。実証実験の様に進めたこの1年で感じた成果はありましたか?

長橋 幸宏さん

石高プロジェクトは、Web3についてあまり知らないユーザーでも使えるサービスを目指しています。ですので、最初コミュニティにはメンバーそれぞれの人脈からお声がけして参加してもらいました。結果的に、Web3を知っている人/知らない人の交わりが生まれ、参加者の属性において良いハイブリッドさが生まれたように思います。

長橋 幸宏さん

また、アプリは、GoogleかAppleのアカウントで簡単にログインでき取引にガス代がかからないということもあり、いい意味でブロックチェーンを感じさせない、ユーザーを選ばないWeb3プロダクトになっているかと思います。

「誰かのためになる」DAO型ソリューションへ

ーーー(編集部)今年1年を実証実験の様に割り切ったからこそ、未来に向けうまく進められているんですね!
石高プロジェクトの今後の展開・構想について教えてください!

長橋 幸宏さん

石高プロジェクトは、町の補助金を活用した事業です。この補助金は3年間ですので、新会社を設立しそれ以降を見据えています。
今後、新しい農家さんに参加してもらったり、様々なものとトークンを紐づけていき町での活用も拡げていくなどして、システムとして有機的に深めていきたいです。

長橋 幸宏さん

そして、この取り組みを他地域に向けて横展開が出来ればとも考えています。
仕組みとして西会津町で深めていったものを下地に、DAO型のソリューションとして完成させ広げていければと思っています。

ーーー(編集部)来年度からはその中でもどの様なことに取り組まれるんでしょうか?

長橋 幸宏さん

達成したい目標としては大きく4つあります。
1つ目は、まず石高プロジェクトを通してちゃんとお米が売れる事です。農家さんのためにも、プロジェクトの実績としても達成していきたいところです。
2つ目は、現在のコミュニティをより強化していく事です。トークン設計を見直したり、イベントなども増やしていくことで、コミュニティで一緒に楽しんでいける仕組みにしていきたいです。

長橋 幸宏さん

3つ目は、今後を見据えて、石高プロジェクトとしての収益構造を模索し設計していくところです。
そして4つ目は、横展開を想定した仕組みづくりを一緒にできる企業や導入したい自治体を見つけていく事です。

これらを達成するためにも、今後はより外部への発信をしていければと思っています。

ーーー(編集部)外部への発信などに関しては是非WEB3地方創生ねっとをご活用ください!最後に石高プロジェクトとして何か宣伝したいことがありましたらどうぞ!

長橋 幸宏さん

手探りで進めているプロジェクトなので、まずは参加してみて欲しいです!
今後はキャッシュレスでの決済もあり、Web3を気軽に体験できるものとなるでしょう。
お米というRWA(リアルワールドアセット)をブロックチェーンで扱う取り組みはまだ珍しいと思うので、是非今後の動きに注目して頂ければと思っています!

長橋 幸宏さん

また、現在OpenSeaでもNFTを販売しています!
OpenSeaでNFTを購入し、アプリのウォレットに送付してもらえれば認識して作動しますので是非ご購入ください!

ーーー(編集部)本日はありがとうございました!是非皆様石高プロジェクトに参加してみてください!

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