明和町の”ファン”を増やしていくメタバース「めいわデジタルプロジェクト」

メタバースを活用して三重県明和町の関係人口増加を目指していく「めいわデジタルプロジェクト」

そんな「めいわデジタルプロジェクト」の魅力について、立ち上げメンバーである三重県明和町 斎宮跡・文化観光課の室岡さん、AVITA株式会社の西口さん、株式会社BUNSUNの川合さんの3名に詳しくお話を伺います。

目次

『めいわデジタルプロジェクト』とは

ーーー(編集部)本日はよろしくお願いします!まずは室岡さんの経歴を教えてください!デジタル系の取り組みはいつ頃から始めたのですか?

室岡さん

三重県明和町 斎宮跡・文化観光課 観光係長の室岡と申します。

明和町で働く以前は東京、千葉、東北で営業として働いていました。
転職のタイミングで三重県を訪れた際に、豊富な歴史文化を中心に観光振興をしようという姿勢に興味を持ち、明和町で働き始めました。その中で昨年度から観光という視点から「持続可能な地域づくり」を推進していくための手段としてデジタル系の取り組みを本格的に始めています。

ーーー(編集部)ありがとうございます。次に改めて「めいわデジタルプロジェクト」について教えてください!

西口さん

メタバースをやること自体が目的になっているプロジェクトが多い中、めいわデジタルプロジェクトでは「アバター」や「メタバース」を一つの手段として、三重県明和町自体の交流人口を増やし、たくさんの方々にファンになっていただくというプロジェクトになっています!

西口さん

ただ交流人口を増やす、明和町について知ってもらう機会を提供するだけではなく、そのような体験を経て、実際に明和町に足を運んでいただいたり、明和町の伝統工芸品を購入したり、明和町に住みたい人が増えることを最終的な目標としています。

ーーー(編集部)「めいわデジタルプロジェクト」を始めることになったきっかけを教えて下さい!

室岡さん

「めいわデジタルプロジェクト」は2022年9月頃から事業の可能性調査を経て2023年度から本格的に始動しました。

室岡さん

私たちは「めいわデジタルプロジェクト」をあくまで手段として捉えています。

「めいわデジタルプロジェクト」の根幹には、50年後、100年後にも明和町に人が住み、明和町であり続ける。「持続可能な地域を作る」という思いがあります。
「現存する文化財を残していく」や「人口を減らさない」などといった課題が地方にはあると思います。課題解決の一つの手段としてデジタル技術を活用し、地域内外の方が訪れたい、住み続けたい明和町を目指しています。

そのための手段としてメタバースやアバターを活用してみようとなり現在に至ります。

ーーー(編集部)これまでに行った取り組みとしてどのようなものがありますか?

西口さん

活動実績としては2022年に東京都内のローソン店内の一区画で、明和町の伝統工芸品「擬革紙(ぎかくし)」「御糸織(みいとおり)」をアバター越しに販売する実証実験、2023年には高輪ゲートウェイ駅で開催されたイベント「Playable Week 2023」内のマルシェでは食品販売を行いました。

どちらもアバターを通して明和町内の商品生産者、観光協会職員によるリモート接客をするといった取り組みになります。

また直近ではメタバースで明和町のコンテンツに触れられる体験を国内外のユーザに体験していただきました。

西口さん

物産展は明和町として過去最高レベルの売上、メタバースイベントでは1ヶ月弱で約170万人以上の来場を記録しています!

ーーー(編集部)170万人は凄いですね!当メディアで225事例ほど扱っていますが、自治体のメタバースプロジェクトの中では最多級の人数だと思います!

ーーー(編集部)現在売上と集客の2軸でかなり成功していると思うのですが、その成果を出すため行ったプロモーション施策としてどのような取り組みをされたのでしょうか?

西口さん

プレイヤーを多く抱えるプラットフォーム選定(「Reality」を活用)、明和町の名産品を活用したSNS企画、人気インフルエンサーの起用などを行いました!これらのPRに関して明和町を拠点にSNSマーケティングに携わる川合さんにも協力していただいたのが大きかったです!

明和町のモデルから他の地域に派生へ

ーーー(編集部)実際に「めいわデジタルプロジェクト」を進めていく上で躓いたところ、苦戦したところなどがあれば教えてください!またメタバースに対して役所内で反対意見などはあったのでしょうか?

室岡さん

役所の中でもメタバースについて理解している人とそうでない人で受け入れの差が大きいと感じました。
メタバースをある程度理解している職員は、現状のメタバースでできることがなんとなく分かっていましたが、メタバースを全く知らない職員は、テレビや映画で見るようなきらびやかなイメージをしてしまうということがありました。

室岡さん

ただ、メタバースに否定的な意見は私の知る限りなかったと思います!

ーーー(編集部)明和町に実際に住まわれてる川合さんにお聞きしたいのですが、「めいわデジタルプロジェクト」について町内でどのような反響があったのかをお聞きしたいです!

川合さん

当プロジェクトでは、明和町にて複数回にわたりアバターとの対話機会を提供してきました。

アバターをはじめて見たという明和町民もたくさんいらして、技術の進歩に驚かれる方が多いという印象を受けました!

川合さん

また、明和町でアバター体験ブースやAIお絵描きソフトなどの最新技術に触れながら親子でテクノロジーを楽しんでもらうというイベントも開催しました。
このイベントの参加者から再開催を希望する声もあり、価値ある体験を提供できたと実感しています。
このプロジェクトを通じて長期にわたり明和町に技術体験の場を提供し、地域に貢献できればと考えています。

ーーー(編集部)地域住民を巻き込んで、取り組みを行っているとのことですが、他のプロジェクトとの一番の違い、強みを教えてください!

西口さん

「めいわデジタルプロジェクト」の特徴は大きく2つあると考えています。

①メタバースの前にアバターを重要視している
まず前提として、メタバースという箱だけを用意しても唐突すぎて集客には繋げられません。そこで、まずはリアル世界でアバターを活用したイベントや物販などを複数回開催し、積極的にメディアにも発信をしていきました。「明和町=デジタル技術」というストーリーをまずは作り、地域の人にアバターに対する親しみを持ってもらい、そこからメタバースに拡大をしていきました。
あくまで入り口はリアルで、メタバースはその拡張の位置付けです。

②地域内での雇用創出を意識している
都市にいながらテクノロジーだけを地域に提供をするだけではうまくいかないとプロジェクト開始前から考えていたので、めいわアバターセンター」というコミュニティを作り、そこから地域の人たちがアバターで働くことができる環境を整えています。
明和町だけではなく、この取り組みを通したノウハウを他の自治体にも広げていき、その過程で新たな働き方や雇用を生み出していこうと考えています。

西口さん

メタバースでマネタイズができている事例は非常に少ないです。よくあるのがメタバースの空間開発に莫大な予算を投下して、一瞬で予算が溶けてその後何もできなくなることです。メタバースの空間を作れば人が集まるというのは幻想なので、メタバースはプロモーション、経済活動はリアルと割り切った取り組みをしています。

ーーー(編集部)NFT市場ではメタバースとNFTがかなり親和性の高いものとして扱われていますが、今後「めいわデジタルプロジェクト」でNFTを使用する展開などはあり得ますか?

西口さん

NFTを活用することは今のところ考えていません。
なぜかよくNFTとメタバースは無理やり結びつけられがちなのですが、今盛り上がっているメタバースにおいてはNFTは必須ではないですし、少なくとも我々のプロジェクトではNFTじゃなくてもできることがほとんどです。

NFTを無理やり使うこともできるんですけど、以前はNFTを活用すること自体がプロモーションになっていた部分があるので、話題作りには良かったんだと思いますが、今はそういうメリットもあまりなさそうです。

ただ、もちろんキャッチアップはしているので、自分たちのやりたいことにNFTが必要となってきたら検討していこうと考えています!

ーーー(編集部)ありがとうございます!最後にメッセージなどがあればお願いします!

室岡さん

明和町としては「めいわデジタルプロジェクト」を通して、より多くの明和町ファン(=関係人口)を増やしていきたいと考えています。

今後の取り組みとして、明和町ファンを中心に町の良さや取り組みを発信していき、何かしらの形でファンと関わることができる仕組みを作っていきたいと思っています!

ーーー(編集部)本日はありがとうございました!皆様、ぜひ明和町の取り組みをチェックしてみてください!

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