日本の自治体として初の実証実験となるWEB3型デジタルスタンプラリー『番ぶらデジタルスタンプラリー3.0 (以下:番ぶら3.0)』を実施した仙台市
今回は、実証事業の全体支援を行った、仙台市の須藤さんに実証事業の背景から、意外な結果、仙台市としてWEB3の可能性をインタビューさせていただきました!
インタビューは2部構成となっていますので、後編も併せてご覧ください。
後編:『国家戦略特区を活かした仙台市のWEB3構想』
きっかけは商店街の回遊促進
ーーー(編集部)本日はよろしくお願いします。まずは「番ぶら3.0」の取り組みを改めて教えてください!
よろしくお願いします!
「番ぶら3.0」は仙台市中心部の商店街エリアを舞台に、閑散期でも回遊を促進し、商業エリアの活性化を目指したデジタルスタンプラリーです。この取り組みではWeb3.0技術を活用し、スタンプ収集に応じたトークン付与の仕組みを実装し、回遊促進に向けた持続可能なインセンティブ付与が可能になる仕組みの有効性を検証しました。
また、今回は地域限定の暗号資産型ステーブルコインの発行を想定した調査も含まれており、今後の実用化に伴う条件や課題も見出す機会となりました。
ーーー(編集部)「番ぶら3.0」実施の背景を教えてください。
仙台駅から西側に位置し、市役所や県庁が集まる仙台市中心部の商店街は古くから「まちの顔」として親しまれてきましたが、仙台駅周辺の発展に伴い、ここ30年間で歩行者通行量が40~50%も減少し、商圏の縮小や来街者数の減少が大きな課題となっていました。特に仙台駅から離れるほど人の流れが少なくなり、6つある商店街の中でも、一番町3商店街(サンモール一番町、ぶらんど~む一番町、一番町四丁目)でその減少が顕著になっている状況です。
こうした問題に対応するため、仙台市と商業者が連携して「仙台市中心部商店街活性化協議会」を組織し、一般社団法人まちくる仙台を運営主体として、活性化に向けた様々な取り組みを進めてきました。
しかし、特に閑散期における来街者の減少対策や持続的な回遊を促すインセンティブ不足が課題として残されていました。こうした状況を打開するため、今回「番ぶら3.0」というデジタルスタンプラリーを企画し、商店街内での回遊促進を支援することで、商業エリアの活性化を目指しました。
国の調査事業を活用し前例のない実証事業を実現する
ーーー(編集部)ありがとうございます。この「番ぶら3.0」は仙台市が2022年に国に提案したWEB3規制改革パッケージと何か関連性はあるのでしょうか?
どちらもWEB3ビジネスの活性化や社会課題解決を目指した規制改革の取組みとしての共通点があります。
「番ぶら3.0」では暗号資産型ステーブルコインの発行主体の制限の有無やその取扱等の明確化を規制改革事項として取り組みました。
ーーー(編集部)「番ぶら3.0」の事業予算としてはどの程度でしょうか?
今回の事業は、本市の産学官連携スキームである「仙台市×東北大学スマートフロンティア協議会」の構成員で「まちの活性化・回遊分科会ワーキンググループ(WG)」を組成し、各方面からの意見を集約しながら進めてきました。
また、本事業は内閣府の「令和5年度先端的サービスの開発・構築や実装のためのデータ連携等に関する調査事業(2次募集)」に応募して採択されており、事業予算は約2,000万円規模となっています。
ーーー(編集部)様々な事業者が参画されていたとのことですが、仙台市の役割を教えてください
本プロジェクトでは、「仙台市×東北大学スマートフロンティア協議会」の構成員である株式会社zero to oneが代表事業者を務め、同じく構成員であるKPMGコンサルティング株式会社が全体の管理や進行をサポートしました。システム開発は地元企業の株式会社セレンディカと株式会社Neo Breakthroughが担当し、商店街との調整は一般社団法人まちくる仙台が担いました。
仙台市は全ての事業者と連携しながら、プロジェクト全体の支援や関係機関との調整を担当しました。
取り組みを通して意外な結果が判明
ーーー(編集部)続いて「番ぶら3.0」の詳細をお聞きしていきます。ユーザーはどのような条件でスタンプを獲得できるのでしょうか?
利用者が仙台市中心部の商店街エリア内を歩いて回遊し、協力店舗に設置されたQRコードをスマートフォンで読み取ることでスタンプを集められる仕組みとなっています。特定の店舗での購入や利用は必須ではなく、回遊するだけでスタンプが獲得できるため、誰でも気軽に参加できる点が特徴です。
このルールにより、利用者の参加ハードルを下げて、より多くの方に商店街を楽しんで回遊していただくことを目的としています!
ーーー(編集部)協力店舗の数(スタンプの設置数)としてはどのくらいだったのでしょうか?
合計で33の店舗に協力していただき、各店舗によっていただくことでスタンプを獲得することができます。
「一定数のスタンプを貯めるとトークンがもらえ、そのトークンが決済に使えるポイントと交換できる」という仕組みになっています。
また、回遊率に応じてトークンの獲得数が変動するため、活発に商店街を回遊するほど多くのトークンを獲得することができ、より多くのポイント交換が可能です。
ーーー(編集部)実証日数とスタンプの配布状況、そして利用者の属性などを教えて下さい
2024年2月1日から2月29日までの29日間にわたり実施されました。この期間中、利用者の方には合計で7,397個のスタンプを獲得していただきました。参加者一人あたりの平均スタンプ獲得数は約15.3個となっています。
事前に1,273名が登録し、そのうち482名が実際にスタンプを1つ以上獲得して参加してくださいました。特に、40~50代の方が多く、また女性の参加者が男性を上回るという結果が見られました。一般的にWeb3.0技術を活用したイベントでは若年層に偏りがちですが、今回の取り組みでは幅広い年齢層からの参加が得られました。
これにより、「番ぶら3.0」が市民の方々にとってWeb3.0技術を体験する良い入口となったと感じています。
ーーー(編集部)40〜50代の女性が多いという結果はとても意外でした!この要因は何だと思われますか?
今回の「番ぶら3.0」に40~50代の女性が多く参加してくださった要因のひとつとして、以前に実施された「めぐってトクする♪デジタルスタンプラリー」の影響が大きいと考えられます。このイベントは仙台市全域の商店街エリアを対象に1800店舗以上が参加し、参加者にとっても非常にお得な内容でした。
そのため、多くの方が参加し、今回もその経験をきっかけに引き続き興味を持っていただけたのではないかと思います。
今回のインタビュー記事はここまでです!