匝瑳市がたった3ヶ月でデジタル住民票を実装できた理由

目次

自然と文化が共存する匝瑳市の新たな取り組み

ーーー(編集部)本日はよろしくお願いいたします!まずは自己紹介をお願いします!

匝瑳市 及川さん

よろしくお願いします。
匝瑳市の及川です。
現在は、匝瑳市の企画課でシティプロモーションやふるさと納税の業務を担当しています。主に地方創生や定住促進、移住支援など、市全体のまちづくりに関わる様々なプロジェクトに携わっています。

もともと私は民間企業で働いており、地域との関わりを重視した事業を行っていました。その中で、匝瑳市にある会社の拠点を通じて市とご縁ができ、人材派遣型の企業版ふるさと納税の枠組みを活用して昨年から匝瑳市で働くことになりました。

ーーー(編集部)ありがとうございます。次に匝瑳市の特徴や魅力に関して教えてください

匝瑳市 仲田さん

匝瑳市は、千葉県の北東部に位置する自然豊かな市です。里山と海が近くにあって、北側では緑あふれる里山の景色、南側では海岸線を楽しむことができます。この自然環境は、訪れる人だけでなく、市民にとっても癒やしの場になっています。

八重垣神社祇園祭(匝瑳市ホームページ)
匝瑳市 仲田さん

また、匝瑳市は伝統的な文化や行事が豊富な地域でもあります。特に「八重垣神社祇園祭」は夏の風物詩として市内外から多くの人が集まり、祭りの熱気が地域全体を包みます。こういった行事を大切にしながら、市民の方々が一体となって文化を守り、育んでいる点が匝瑳市の大きな魅力だと思います。

さらに、市民の皆さんはとても温かく、親しみやすい方ばかりで、地域に溶け込みやすい雰囲気があります。この人々の温かさも、匝瑳市の魅力としてぜひ知っていただきたいポイントです。

ーーー(編集部)次に企画課の業務内容に関しても教えてください!

匝瑳市 仲田さん

企画課は匝瑳市のまちづくりに直結する部署で、主に3つの班に分かれてそれぞれの業務を担当しています。

1つ目は企画調整班で、市全体の総合計画の策定や国際交流、通常のふるさと納税業務、統計管理などを行っています。市の運営方針や長期的なビジョンに基づいた計画を立てるのが主な役割です。

2つ目が情報推進室で、市内の情報処理やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を担っています。この部署では、庁舎内のシステム管理や、行政のデジタル化を進めるための施策に取り組んでいます。

そして、私が所属しているのが3つ目のまちづくり戦略室です。こちらは、シティプロモーションや地方創生関連の施策、ふるさと納税の推進業務、さらに定住・移住促進や婚活支援なども手掛けています。この戦略室は市長直結の重要施策を扱う部署で、匝瑳市の発展に直接的に関わる業務が多いのが特徴です。

匝瑳市デジタル住民票NFTとは

ーーー(編集部)改めて匝瑳市デジタル住民票NFT」に関して教えてください

匝瑳市デジタル住民票NFT
匝瑳市 及川さん

「匝瑳市デジタル住民票」は、匝瑳市がシティプロモーションの一環として実施した新しい取り組みです。これはNFT技術を活用して発行され、主に市外の方々に「デジタル住民」として匝瑳市に関わりを持っていただくことを目的としています。イメージとしては、匝瑳市のファンクラブ会員証のような位置付けです。

ーーー(編集部)この「匝瑳市デジタル住民票NFT」を購入するとどのような特典があるのでしょうか?

匝瑳市 及川さん

匝瑳市デジタル住民票を購入すると、以下の特典があります:
市長とのオンライン交流会
デジタル住民票を持つ方限定で、市長と直接対話できる交流会に参加できます。

観光物産センター「めぐりの里」での特典
レンタサイクルが無料で利用できるほか、市内で使えるユートリーカード(25ポイント付与済み)を受け取れます。

ご当地ヒーロー「ソーサマン」の記念NFT贈呈
デジタル住民票を2024年5月31日までに保有している方には、ソーサマンの「ソーサレッド記念NFT」が贈られます。

市長とのオンライン交流会の様子(匝瑳市ホームページ)

ーーー(編集部)ありがとうございます。続いて「匝瑳市デジタル住民票NFT」を導入した背景や経緯を教えてください!

匝瑳市 及川さん

匝瑳市デジタル住民票NFTを導入した背景には、市自体の知名度が低いという課題がありました。シティプロモーションの一環として、どのようにして市外の方々に匝瑳市を知ってもらい、関係を深めていくかを模索していた中で、NFTという手法に出会いました。

きっかけとなったのは、匝瑳市地域おこし協力隊のメンバーの一人が山形県西川町で実施されていたデジタル住民票の事例を紹介してくれたことです。当時、全国でもデジタル住民票の取り組みを実施していたのは西川町と山口県美祢市の2自治体しかなく、情報が非常に限られていました。そのため、これらの自治体にヒアリングを行い、特典内容や運用方法などの情報収集を行いました。

匝瑳市 及川さん

こうした調査を通じて、匝瑳市でもデジタル住民票を活用することで、市外の方々とのつながりを作り、市の魅力を広く発信できるのではないかと考え、企画を練り上げていきました。

ーーー(編集部)地域おこし協力隊の人が取り組みの起点になったのですね!!このデジタル住民票を提案した際、課内ではどのような反応だったのでしょうか?

匝瑳市 及川さん

提案時、課内では「形のないデジタル上のものを本当に販売できるのか?」という意見を多くいただきました。NFTやデジタル住民票といった概念がまだ馴染みの薄いもので、「触れないものをどうやって説明するのか」といった反応もありました。また、「住民票」という名前が本物の住民票と混同されるのではないか、という懸念も出ました。

匝瑳市 仲田さん

さらに、匝瑳市はもともとデジタル分野が弱いという課題も抱えており、「デジタル住民票の販売を進められるのか」「そもそも予算がない中で実現できるのか」といった意見もいただきました。

しかし、匝瑳市が「東の横綱」とも呼ばれる難読地名であることを逆手に取り、この特性をプロモーションのフックに活用しようという意見が出たことで、次第に前向きな雰囲気が生まれました。最終的には、地域おこし協力隊の提案者が「まずはやってみよう」という姿勢で粘り強く説明を重ね、上司の協力も得られた結果、課内の理解が進み、プロジェクトを実現に向けて動かすことができました。

企画立案から3ヶ月で販売を実現

ーーー(編集部)企画推進にあたって、苦労した点などがあれば教えてください

匝瑳市 及川さん

まず、「デジタル住民票」という名称についてです。本物の住民票と混同されるのではないかという懸念が強く、初めは「ファンクラブ会員証」のような別の名前を使う案も出ました。しかし、「デジタル住民票NFT」という名前だからこそ意味がある、という点を何度も説明し、理解を得るまでに時間がかかりました。

匝瑳市 及川さん

また、特典の実現に向けての調整も課題でした。特典の一つであるレンタサイクルやユートリーカードについては、市が管理している施設だったため比較的スムーズでしたが、ご当地ヒーロー「ソーサマン」のNFT作成では、約1,000枚の写真撮影と管理が必要で非常に手間がかかりました。それぞれの写真がユニークでなければならないため、撮影時のポーズや構図を工夫し、一つ一つ確認しながら進めました。

さらに、市の職員全体としてデジタル分野への知見が十分ではないため、NFTの仕組みや価値を関係者に説明するのにも苦労しました。これに関しては、地域おこし協力隊や担当者が勉強しながら提案を進め、周囲の協力を得ることで対応しました。
こうした調整を経て、ようやく企画を実現に漕ぎ着けることができました。

ーーー(編集部)この「匝瑳市デジタル住民票NFT」の販売状況を教えてください。

匝瑳市 及川さん

匝瑳市デジタル住民票の販売状況ですが、販売開始直後から大きな反響をいただき、約1分で完売しました。初回の1,000枚限定販売に対して、最終的には応募倍率が2.5倍に達し、多くの方に興味を持っていただけたことを実感しています。

この反響は、課内でも予想を超えたものでした。特に、企画から実装までの期間がわずか3ヶ月という非常にタイトなスケジュールだったため、「本当に販売が成立するのか」「需要はあるのか」といった不安が関係者の中でも多くありました。そのため、販売直後に完売し、予想以上の応募があった際は安堵するとともに、大きな手応えを感じました。

匝瑳市 及川さん

一方で、転売や購入者特典のさらなる活用をどのように促進していくかといった課題も見えてきました。この販売を通じて、匝瑳市のプロモーションとして一定の成果を得られた一方、次にどのように購入者との関係性を深めていくかが鍵になると考えています。
今回の成功は、関係者全員が協力し、短期間で企画を形にした結果でもありますが、さらにこの取り組みを活かして、匝瑳市の魅力を広げていきたいと思っています。

ーーー(編集部)3ヶ月という非常に短い期間で販売を実現できた要因は何でしょうか?

匝瑳市 及川さん

3ヶ月間で実施できた理由は、提案者の熱意と調査力、トップの迅速な意思決定、そしてチーム全体の柔軟な対応力が噛み合ったからと考えています!

ーーー(編集部)「匝瑳市デジタル住民票NFT」を実際にやってみて得た成果や感じたことなどがあれば教えてください

匝瑳市 及川さん

まず、匝瑳市の知名度向上に貢献できた点が大きな成果です。販売開始直後に完売し、多くの方に匝瑳市に興味を持っていただけたことは、シティプロモーションとして大きな手応えがありました。これまで接点のなかった方々にも匝瑳市の名前や魅力が届いたと感じています。

次に、デジタル技術を活用した新しい形のプロジェクトを実現できたこと自体が成果だと考えています。NFTを活用した取り組みは、全国でも数えるほどしかなく、匝瑳市が新しい挑戦をしたことが注目され、自治体としてのブランド価値の向上にもつながったと思います。
また、購入者との関係づくりの第一歩を踏み出せたことも重要です。オンライン交流会や特典の利用を通じて、実際に市外の方が匝瑳市に関心を持ち、関わってくださる姿を目にすることで、関係人口創出への可能性を感じることができました。

匝瑳市 及川さん

一方で、課題も浮き彫りになりましたが、それを含めて大きな学びのあるプロジェクトだったと実感しています。これを基に、今後さらに効果的な取り組みを模索していきたいと考えています。

匝瑳市の目指す未来

ーーー(編集部)「匝瑳市デジタル住民票NFT」と今後どのような関係性を築いて行きたいですか?

匝瑳市 及川さん

デジタル住民票をきっかけに匝瑳市を知っていただき、市の魅力を一緒に広げる仲間としてつながりを深めたいです。SNSやオンライン交流を通じて、情報発信や意見交換の場を充実させ、市外の方々にも匝瑳市を応援していただける仕組みを作ります。

また、特典やイベントを通じて、デジタル住民票の持ち味をさらに活かし、「関わり続けたい」と思ってもらえる関係性を目指します。

ーーー(編集部)匝瑳市(まちづくり課)として今後、実現したいことなどがあれば教えて下さい

匝瑳市 仲田さん

まず、デジタル人材の育成や確保が大きな課題と考えています。現在、職員の中でデジタル分野に強い人材が不足しているため、職員のスキルアップを図るとともに、外部から専門性を持った人材を積極的に迎え入れる仕組みを整えたいと考えています。

また、地域の活性化や定住促進に力を入れたいと思います。特に、移住希望者の支援や地域の魅力を発信する施策を強化し、市内外の人々が「匝瑳市で暮らしてみたい」と思える環境づくりを進めたいです。

匝瑳市 仲田さん

さらに、環境に配慮したまちづくりも重要なテーマです。匝瑳市は「脱炭素先行地域」として選定されているため、持続可能なエネルギー活用や地域資源を活かした取り組みを進め、住みやすい環境の整備を目指します。

ーーー(編集部)最後にPRなどがあればお願いします

匝瑳市 仲田さん

匝瑳市では、企業版ふるさと納税を積極的に活用しています。この仕組みを通じて、地域の課題解決に向けた取り組みや、人材派遣型のプロジェクトを実施し、企業の皆様の知見やスキルを地域に還元する活動を行っています。

匝瑳市 仲田さん

また、施設ネーミングライツの導入にも力を入れています。市内の公共施設に企業名を冠することで、地域密着型のPR活動が可能です。匝瑳市は、脱炭素先行地域に選ばれているほか、4月には高速インターチェンジが開通し、アクセスの向上により注目度も高まっています。この機会を活かし、地域とつながりを持ちながら企業の魅力を広く発信する場を提供したいと考えています。

匝瑳市 仲田さん

匝瑳市とともに地域を盛り上げるプロジェクトに興味をお持ちの企業の皆様、ぜひご相談ください!

ーーー(編集部)ありがとうございました!引き続きよろしくお願いたします。


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