日本初の複数自治体連合によって運営されるDAO『美しい村DAO』
今回はそんな「美しい村DAO」のDAO事業支援を行う株式会社ガイアックスの峯さんに、「美しい村DAO」発足から『DAO×地方創生』の可能性について伺いました!

日本で最も美しい村の連合がDAOに
ーーー(編集部)本日はよろしくお願いします。まず「美しい村DAO」とはどういった組織なのか教えてください


美しい村DAOは、「日本で最も美しい村」連合を母体とした組織です。
この連合は、人口1万人以下で、2つ以上の美しい地域資源を持ち、地方創生に積極的に取り組む町・村で構成されており、現在では59の自治体・地域が参加しています。美しい村DAOはその加盟村の一つである鳥取県智頭町が主体として始めた取り組みで、新潟県旧山古志村の取り組みをロールモデルとしています。これまでは各自治体が個別に行っていた地方創生活動を、web3の力を使った連携をして一つの組織として進めていこうという目的で発足しました。
ーーー(編集部)美しい村連合とDAOの出会いは何だったのでしょうか?



美しい村DAOの組成の背景には、シェアオフィスでの出会いがありました。
美しい村づくりプロジェクトの代表である北山さん、そして智頭町職員の方とは同じシェアオフィスで働いていた顔見知りでした。北山さんと智頭町の方が山古志の事例をもとに地方創生を進めようとしたとき、web3やDAOの知識が必要だとなり、私にお声がかかりました。企画段階で連合の加盟村に提案していく中で、静岡県松崎町も参加を表明し仲間に入ってくれました。
ーーー(編集部)美しい村DAOの目的、ビジョンなどをお聞きしたいです!



美しい村DAOのビジョンは、過疎化が進む町や村を持続可能な形で存続させることです。現在、DAOに加盟している智頭町と松崎町も、人口が6000人規模でこのままでは消滅の危機にあるとされています。これらの地域を守るために、web3の技術やDAOを活用し、地域資源を活かした持続可能な仕組みを構築することを目指しています。
ーーー(編集部)現在DAOに参画している自治体を教えてください



美しい村DAOは2024年9月時点で鳥取県智頭町と静岡県松崎町が参加しています。その他に現在長野県中川村がお試し入会期間として参画しています。他にも複数の自治体がお試し入会に向けて準備を進めています。
さらに、参加希望の自治体がいるのですが、自治体として参加するために議会の承認を得るまでに時間がかかっている状態です。
ーーー(編集部)DAOの規模としてはどのくらいなのでしょうか?





現在、美しい村DAOのDiscordには約400名のメンバーが参加しています。DAOで発行しているNFTを購入した方々は『デジタル村民』として参加することができ、これまでにのべ約100名の方がNFTを購入しています。また、実際に加盟村に住んでいるリアル村民として加盟村に住んでいる、また働いている方も20名弱が参加しており、地域資源を生かしたNFTの企画やDAOの投票などの意思決定プロセスに参加しています。
DAO発のリアルイベントを通してデジタルとリアルの垣根をなくす


ーーー(編集部)現在のDAOの状況はいかがでしょうか?



今年の2月に松崎町で自治体ツアーという形でイベントを開催したのですが、その前後でコミュニティは非常に活発になりました。特に盛り上がったトピックとしては、ツアーの中身や町長がデザインしたNFTの方向性などに関する議論です。



ツアー自体も助成金を活用したこともあり、東京からの交通費込み2泊で1万円とかなりお得な内容でした。その中でも、デジタル村民とリアル住民が直接交流する機会を得られたことが一番の収穫だったと思います。それまでデジタル住民とリアル住民の間で交流は活発とはいえないものでしたが、実際に顔を合わせることで、「棚田の〇〇さん」や「あの山の〇〇さん」といった具体的な関わりが生まれたことが大きな成果です!



その後、地域資源をテーマにしたNFT企画販売も行われました。その後、盛り上がりを維持しようとしましたが、2度目や3度目の訪問にはまだ繋がっておらず、交流の頻度は減少しています。今後は再び盛り上がりを促す施策が必要です。
ーーー(編集部)先ほどの中で町長がNFTアートを制作したとの話があったのですが、詳細を教えてください!



町長はNFTについてそれほど詳しくなかったのですが、書道が得意ということで、その特技を活かしてNFT作成に参加していただきました。
町長が発した言葉をプロンプトとしAIで生成した松崎町の風景画像に、町長が書いた書をスキャンし組み合わせて、みんなで一緒にNFTを作り上げたんです。


ーーー(編集部)他にもDAO発で実施したプロジェクトなどはなにかありますか?



ツアー後に実施した取り組みの一つとして『お花畑プロジェクト』を活用したイベントを行いました。この『お花畑プロジェクト』はもともと松崎町で実施されていたイベントで、これを活用し『花畑米』を考案しました。
これは田んぼに恵まれた松崎町で実施した取り組みで、冬に使われていない田んぼをお花畑に変え、そこで高級なお弁当を楽しむという内容です。さらに、そのお花畑で収穫された米の購入権をNFTとして販売しました。企画自体はデジタル村民が話し合いながら作成し、『花畑米』という新ブランドも誕生しました。
ーーー(編集部)DAO発のNFTはどういったフローで決定されるのでしょうか?



DAO内で販売するNFTは、すべてデジタル村民の投票によって決まります。例えば、中川村では御札のNFTを販売していますが、その販売も中川村の方がAMA(Ask Me Anything)を実施し、デジタル村民の意見を集めたうえで提案を作成し、デジタル村民投票にて承認されました。
各NFTには売上金の使い方などの記載もあり、そのような事項をすべてデジタル村民投票によって意思決定される仕組みとなっています。
目標は美しい村連合すべての自治体が参加すること


ーーー(編集部)「デジタル村民とリアル村民のコミュニケーション」などで苦労したポイントなどがあればおしえてください



DAO運営で最も苦労するのは、コミュニティの活発さがすぐに減少してしまうことです。メンバー同士のコミュニケーションが成果に繋がっている場合は活気が続きますが、そうでないと次第に衰退してしまいます。その対策として、ホットな話題を提供する人を配置したり、定期的にAMAを開催したり、リアルなオフ会を実施するなど、コミュニティを活性化させるための取り組みを行うことが重要です。
ーーー(編集部)「美しい村DAO」の今後についての方針をお聞ききしていきます
ーーー(編集部)短期、中長期でチャレンジしていきたいことなどがあれば、それぞれ教えてください!



美しい村DAOの今後の大きな目標は、「日本で最も美しい村」連合の59の加盟村全てが、美しい村DAOに参加することです。これが実現すれば、デジタル村民も1万人規模に達すると考えています。そのためには、成功事例を増やすことが重要です。
美しい村DAOでは、どこかの加盟自治体で成功したプロジェクトを、他の自治体でも展開できる特徴があります。例えば松崎町での『花畑米』を他地域でも〇〇産の『花畑米』として使用することができるため、成功事例をDAO内で循環させていけるのです。
DAOは都市部にいながら地方と繋がり続ける新たな手段


ーーー(編集部)次により大きな視点での質問をしていきます。
ーーー(編集部)DAOに関する法整備が着実に進み、様々な分野におけるDAOプロジェクトが増加していると思います。特に自治体を主体とした「地方創生×DAO」の事例は今後増加していくと思いますか?



DAOの事例は今後、確実に増えていくと考えています。
特に、これまで難しかった“関係人口”を増やすためのツールが充実してきているのが大きな要因です。ふるさと納税は寄付で終わることが多いですが、DAOを活用すれば単にお金を送るだけでなく、地方との深い関わりを持つことができます。web3技術を使って、都市にいながら地方と繋がり続ける新しい手段が生まれつつあるのです。



美しい村DAOを実際にやってみて気付いたこととして、地方を離れて都会へ移住した人々がふるさとを応援する方法が限られてるという点です。現状では、ふるさと納税のような資金的な貢献に留まり、持続的な関わりは少ない状態でとなっていることが多く感じます。しかし、DAOを通じて、地元に簡単に貢献できる仕組みが整ったことで、『地元に直接関与できる』という声をいただき、ここにDAOの価値があると改めて感じました。
このような仕組みが広がれば、たとえ地方の人口が減少しても、外部からのサポートを得て、持続可能なコミュニティが作れるのではないかと考えています。
ーーー(編集部)峯さんが考えるDAO活性化の「鍵」は何だと思いますか?



DAOの活性化の鍵は2つあります。
1つ目は、参加者が『自分が時間を使いたい』と思えるDAOとのマッチングです。個人の興味や関心に合わないDAOでは、エンゲージメントが低くなりがちです。たとえば、猫が好きな人には猫に関連したDAOがマッチすれば、エンゲージメントが高まると思います。
2つ目は、DAO形成をより効率的に行うための環境整備です。
現在、投票ツールやNFT認証ツールなど1つのDAOを形成する際には平均6,7つのツールを使用する必要があります。これを簡略化するシステムやテンプレートを整備することでより簡単にDAOを形成することが可能となります。
ーーー(編集部)ガイアックスさん、峯さん個人として今後どのようなことにチャレンジしていきたいですか?





今後、ガイアックスとしては、美しい村DAOの参加自治体をさらに増やし、地方創生DAOを拡大していきたいと考えています。特に、1つの地域だけでのDAO形成が難しいため、複数地域が連携して、ブランドを作ることで、より強固なDAOを目指します。また、美しい村DAOで蓄積したノウハウを活かし、他のDAOモデルの展開にも取り組む予定です。最終的には、地域や個人が独自のブランドを築ける仕組みを構築したいと思っています。



個人的には、地方の人手不足を解決するためのDAOをやってみたいと考えています。現在、地方は本当に人手が不足しており、自治体職員がそもそも足りていないという話も耳にします。そんな人手不足にDAOを活用することで、スポット的に人材不足を埋め、地域に貢献できる仕組みを作れるのではないかと思っています。
ーーー(編集部)最後にPRなどがあればお願いします



DAOを活用することで、自治体や企業の様々な課題解決が可能だと考えています。
特に自治体では、人材不足をスポット的に補う補充するためにDAOを活用できるとおもっています。企業においても、部署や会社を横断的にDAOを活用して組織運営できる点が魅力です。ガイアックスはこれまで多くのDAO事業を支援してきた実績があり、豊富な知見を持っています。また、『DAOX』というツールを開発し、1つのプラットフォームでWEB2のように簡単にDAO運営が可能になっています。DAOの導入や運営にご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
ーーー(編集部)ありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。