北國銀行が1年でステーブルコインの事業化に成功した理由

日本初となる預金型ステーブルコイン「トチカ」をはじめとした新たな金融プラットフォーム「トチツーカ」をわずか1年という短期間で事業化に成功した北國銀行。

今回はそんなステーブルコイン事業の事業責任者である今津さんに、事業推進の裏話から地域金融×WEB3の展望までを伺いました!

インタビューは2部構成となっていますので、後編も併せてご覧ください。
後編:『ステーブルコインは銀行業を変革する!北國銀行今津さんに聞く地域金融の未来ビジョン

目次

『トチカ』『トチポ』が拓く地域経済の新時代

ーーー(編集部)本日はよろしくお願いいたします!まず北國銀行のWEB3、特にデジタル通貨「トチカ」や「トチポ」の取り組みと、導入の経緯について教えてください!

「トチツーカ」アプリ
北國銀行    今津さん

よろしくお願いします!北國銀行では2023年8月からステーブルコインの取り組みを開始しました。秋にはアプリをリリースし、2024年4月からはステーブルコインとポイント機能を追加し、本格的な運用を始めました。「トチポ」はポイントサービスで、既存の地域通貨と似た仕組みを持っています。「トチカ」は日本初の預金型ステーブルコインで、預金をトークン化したものです。そして、「トチツーカ」はこれらのサービスを統合するプラットフォームです。これにより、地域経済の活性化を目指し、新たな仕組みを提供しています。

北國銀行    今津さん

この取り組みの背景には、北國銀行が長年にわたってキャッシュレス化を推進してきた経緯があります。20年以上前から、地域経済を支えるためには、現金や書類のやり取りを減らし、時間を有効活用することが重要だと考えてきました。約10年前からは、Visaカードのブランドを取得し、積極的にキャッシュレス化を進めてきました。しかし、成長が鈍化している現状を打破するために、新たなアプローチとしてデジタル地域通貨やステーブルコインの導入に踏み切りました。この新しい取り組みを通じて、地域経済のさらなる活性化を目指しています。

ーーー(編集部)ありがとうございます。「トチカ」の発行前に「トチポ」を発行されたと伺いましたが、いずれもブロックチェーンを活用しているのでしょうか?またその理由を教えて下さい!

北國銀行    今津さん

「トチカ」「トチポ」には同一のブロックチェーン技術を使用しています。これはブロックチェーンを活用することで、安全かつコストパフォーマンスに優れたシステムを提供できると考えたためです。他の技術でも実現可能かもしれませんが、ブロックチェーンは特にコスト面で優れているため、この技術を選択した背景があります。

ーーー(編集部)現在の「トチカ」「トチポ」の利用状況について教えてください。どれくらいの人が利用しているのでしょうか?

北國銀行    今津さん

現時点では、本格的なプロモーションはまだ行っておらず、利用者が少ない状況のため、加盟店を増やしている段階です。2024年7月には20%キャッシュバックキャンペーンを予定しており、そちらに向けた準備を進めています。現在、加盟店は約1500店舗に達しており、石川県内全域で展開しています。加盟店に対しては、主にQRコード決済の利便性と、デジタル通貨を使用することで手数料が低く抑えられる点をアピールしています。ユーザーからは、昨年10月のサービス開始以来、操作がわかりにくいなどのフィードバックを頂いており、順次改善を進めているところです。本格的なプロモーションはこれからですが、さらなる利便性向上を目指しています。

WEB3を意識せず使いやすさを重視した設計に

ーーー(編集部)デジタル通貨を導入することで、地域経済にどのような変化が起こると考えていますか?

北國銀行    今津さん

デジタル通貨の導入により、地域内でのお金の流れがスムーズになることを期待しています。特に、キャッシュレス化やデジタル化を推進している自治体からは非常に高い評価を受けています。現段階ではまだ具体的な成果は見えていませんが、キャッシュレス化を進める上で、従来の加盟店手数料が高く、地域でお金を回す仕組みとしては限界がありました。そこで、このサービスが広がれば地域経済の活性化に大きく寄与するとの声をいただいています。

また、自治体の方々からも「これほどの低コストで実現できるのは魅力的だ」と好評をいただいています。
今後、さらに多くの自治体がこの取り組みに参加し、地域経済の活性化を目指してデジタル通貨を導入していくことを期待しています。

ーーー(編集部)利用者は「トチカ」や「トチポ」にブロックチェーンが使われていることを認識しているのでしょうか?

北國銀行    今津さん

いえ、利用者はその点にはあまり関心がないと思います。利用者にとって重要なのは、デジタル通貨として便利に使えることです。ブロックチェーンが裏側で動いているかどうかはあまり意識していないでしょう。

ーーー(編集部)つまり、既存のデジタル地域通貨通貨と同じように利用しているということですね。

北國銀行    今津さん

その通りです。しかし、ブロックチェーン技術を使うことで、将来的には他のサービスと容易に連携できるようになります。例えば、健康マイレージをポイントに交換するサービスなども視野に入れています。

最速で事業化に成功した秘訣は環境

ーーー(編集部)「トチカ」や「トチポ」が1年という短期間でローンチできた秘訣について教えてください。

北國銀行    今津さん

北國銀行では失敗を許容する環境が整っていることが大きな要因です。この分野に関わり始めたのは1年前からですが、社内には新しいプロジェクトに挑戦する文化が根付いており、それがスピード感を持ってプロジェクトを進めることを可能にしています。さらに、社内の各部署との連携が密で、柔軟にプロジェクトチームを組むことができたのも大きなポイントです。

ーーー(編集部)なるほど、失敗を恐れずに挑戦する文化がスピード感を生んでいるのですね。具体的にどのような課題がありましたか?

北國銀行    今津さん

技術面では、前例のないことが多く、当局に相談しても明確な答えが得られないことが多々ありました。そのため銀行の既存業務を参考にしながら、専門家にヒアリングを重ねて試行錯誤を続けました。例えば、銀行法に基づくシステム設計をどうするか、AML(アンチマネーロンダリング)やKYC(顧客確認)をどう実現するかなど、多くの課題がありました。

ーーー(編集部)その過程でどのような解決策が見つかったのでしょうか?

北國銀行    今津さん

最終的には、デジタルマネーとして預金をトークン化するためのシステムを構築しました。ブロックチェーン技術を活用し、これにより安全かつ効率的なシステムが実現できました。AMLやKYCについても、既存の銀行業務を参考にしながら解決策を見つけました。

ーーー(編集部)プロジェクトを推進する上で参考にしたサービス、事例などはありますか?

北國銀行    今津さん

前例のないケースであったため、独自での取り組みが必要でした。一方で、アプリUI/UXの面では、既存で利用されている決済サービスなどを参考にしています。

ーーー(編集部)「トチカ」や「トチポ」に関して、特に意識して作ったポイントはありますか?

北國銀行    今津さん

預金型のステーブルコインとして、既存のデジタル通貨とは違う形で設計しました。

今回のインタビュー記事はここまでです!

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