J2クラブ・サガン鳥栖におけるファントークン事業。
その背後には、WEB3を活用して「応援の新しいかたち」を模索する企業、Jasmy株式会社の存在があります。
今回はこの事業を推進するJasmy CFOの原田浩志さんにインタビューを実施。
インタビュー前編では、ファントークンを活用したデジタル会員証の設計、地域店舗との連携、そしてWEB3を“感じさせない”ユーザー体験の構築についてお話を伺いました。

後編では現在実装を進めている「地域通貨・コミュニティ通貨化構想」や、WEB3が描く新たな市民経済圏、さらにJasmyが目指す“地方創生×分散型インフラ”の未来像に迫ります。
インタビューは2部構成となっております。前編の続きになっておりますので、こちらも併せてご覧ください。
前編:『WEB3でスタジアムと街とファンをつなぐ。Jasmyが挑む「サガン鳥栖」ファンクラブの再構築』
ファントークンの“地域通貨・コミュニティ通貨化”の構想
ーーー(編集部)これまでのファントークンは「応援」や「ファン特典」が中心でしたが、いま“地域通貨・コミュニティ通貨”としての展開も構想されているそうですね。

はい。私たちがいま注力しているのが、ファントークンを単なる応援ツールに留めず、地域やコミュニティの中で日常的に使える通貨へと発展させる取り組みです。
きっかけは、ファントークンを店舗で提示すると割引が受けられるという仕組みを通じて、「応援が街に還元されていく」循環を感じたことでした。



現在はこの仕組みをさらに広げ、「チャージして支払える」「貯めて使える」トークンにするため、電子マネー型の地域ポイントシステムを構築中です。
具体的には、QRコード決済と連動し、ファントークンをSuicaのようにスムーズに決済で使えるようにする計画です。


ーーー(編集部)“サガン鳥栖を通じた地域共通ポイント”のようなイメージでしょうか?



まさにそうです。
試合観戦のときにトークンを使って飲食を楽しんでもらったり、日常的に地域の飲食店や商店で使えたりと、「サガン鳥栖ファンであることが地域生活の一部になる」ような仕組みを目指しています。



また、今後はトークン利用によって貯まったポイントを、イベントの優待や限定グッズとの交換に使えるようにもしたい。
地域における消費や参加が、自然とクラブの応援につながる“循環経済”の中核にしたいと考えています。
ーーー(編集部)なるほど、ファンと地域を同時に巻き込む狙いがあったのですね。ありがとうございます。
WEB3が描く「市民経済圏」のインフラ設計
ーーー(編集部)ファントークンを地域通貨・コミュニティ通貨として活用する話を伺いましたが、さらに広がる構想はあるのでしょうか?



はい、私たちが目指しているのは“応援経済”から“市民経済圏”への進化です。つまり、クラブチームとファンとの関係性だけでなく、トークンを通じて地域に暮らすあらゆる人の生活に関わるインフラにしていきたいと考えています。



たとえば、地域の商店街や飲食店だけでなく、大学・自治体・交通・電力・観光事業者といった幅広いステークホルダーと連携し、ファントークンが日常のさまざまな活動に対する“リワード”として流通する世界です。
電気を節約した、地域イベントに参加した、観光客を案内した──そんな日々の行動がトークンとして可視化され、生活者に還元される経済の仕組みを構想しています。
ーーー(編集部)まさに、地域に根付いた“生活インフラ”としてのWEB3ですね。



その通りです。
これまでの“ポイント制度”との違いは、透明性・相互運用性・持ち運び可能性にあります。ブロックチェーンを活用することで、誰が・いつ・どこで・どのようにトークンを得たかという履歴が、個人の“信頼スコア”として蓄積されていく。
これが「市民経済圏」における新たな信用基盤になると考えています。



たとえば、NFTの保有履歴や地域貢献アクティビティがトークン化されていれば、転居した際にも「この人は以前の地域でコミュニティ活動を積極的に行っていた」という情報を他の地域で活用できる、つまり、信用の可搬性が生まれるわけです。
ーーー(編集部)それは行政にとっても、非常に価値あるデータになりそうです。



そうですね。
自治体や事業者にとっても、トークンの流通や利用履歴を通じて、これまで見えなかった市民の参加状況・行動傾向が可視化されるようになります。
WEB3の設計思想で重要なのは、「中央集権的に集めるのではなく、分散された参加を可視化・共有する」ということ。



Jasmyが提供している「データロッカー」の技術を使えば、個人が自分のデータを自律的に管理し、必要に応じて他者に開示することができるようになります。
この技術をファントークンと組み合わせることで、行政・商店・観光・教育など、あらゆる分野を横断する“市民経済の情報基盤”が形成できると考えています。


Jasmyが考えるWEB3×地方創生の未来
ーーー(編集部)ファントークンや地域通貨・コミュニティ通貨の話を伺ってきましたが、最終的にJasmyが描く「WEB3×地方創生」のビジョンとはどのようなものでしょうか?



一言で言えば、“地方にこそWEB3の可能性がある”ということです。都市部はインフラや制度が整っている一方で、地方には「まだ何も始まっていない」という余白がある。だからこそ、ゼロからWEB3の思想やインフラを組み込むことができるんです。



たとえば、私が今構想しているのは、北海道や九州のように電力が安く、土地も比較的広く使える地域に分散型データセンターを構えることです。ここにGPUなどの演算リソースを配置し、AI開発やWEB3関連サービスのバックエンドとして機能させる。
つまり、「地方にデジタル産業の中核拠点をつくる」わけです。
ーーー(編集部)デジタル資源による産業誘致という側面もあるわけですね。



そうですね。
私たちが大事にしているのは、WEB3を“使っていると感じさせない”こと。難しい技術の話ではなく、「これは便利」「これなら応援したい」と自然に思えるような仕組みにする。
それが結果的にWEB3の社会実装にもつながっていくと信じています。



たとえば、将来的にはサガン鳥栖の試合を観に来た海外旅行客が、そのままトークンを通じて鳥栖の飲食店や土産物屋を利用できるようになる。観光と通貨と地域のエコシステムが一体となった未来を、WEB3で描いていきたいです。


ーーー(編集部)最後に宣伝やPRなどがあればお願いします!



サガン鳥栖ファントークンが「シン・サガン鳥栖ファントークン」としてリニューアルします!
選手の隠された好プレーを「わたしの推しプレー」として応援し、共感を通じてコミュニティの輪を拡大していきます。さらに応援を通じてポイントがどんどんたまっていき、このポイントをお店でも利用できるようになります。
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ーーー(編集部)原田さん、ありがとうございました!今後ともよろしくお願いします!
※本記事は2025年1月にインタビューした内容をもとに作成しています。