SBIトレーサビリティ株式会社が提供する「SHIMENAWA(しめなわ)」は、ブロックチェーンとNFC/RFID技術を融合させることで、模倣品対策やファン作りの課題を解決に導く革新的なサービスです。商品一つひとつに固有IDを付与することで確実な「真贋証明」を行うだけでなく、購入者限定のデジタル体験を通じた「ファン作り」、さらには現場の負担となる「在庫管理の効率化」までを同時に実現します。
この記事では、同社取締役CTOの齋藤陸氏と営業担当の林田幸子氏にインタビュー。「SHIMENAWA」がどのような仕組みでブランドを守り、顧客との新しい繋がりを創出しているのか、その全貌と活用事例について詳しくお話を伺いました。
今回のインタビュー記事は、前編と後編に分かれております。
後編では、SHIMENAWAに込められた熱い想いなどを語っていただいております。
後編はこちら↓↓
「「日本の本物を、正当な価格で世界へ」SBIトレーサビリティが語る、熱い想いと導入事例」

齋藤 陸
SBIトレーサビリティ
取締役CTO
インタビュイー
保険会社基幹システム開発、銀行向けスマホアプリ開発、国内スタートアップでのCRM開発を経て 、2022年 SBIトレーサビリティ株式会社 入社、SHIMENAWAアプリケーション開発に従事 。2023年 SBIトレーサビリティ株式会社 取締役CTOに就任

林田 幸子
SBIトレーサビリティ
営業
インタビュイー
旅行会社にて地域と連動したツアーやイベントの企画・運営に携わる。SBIグループ会社等の人事を経て、2024年SBIトレーサビリティ株式会社入社。営業に従事。
NFCタグとブロックチェーンで消費者に「本物」の安心感を

ーーー(編集部)SBIトレーサビリティ株式会社が運営する「SHIMENAWA」について概要を教えてください
SBI 齋藤SHIMENAWAは、ブロックチェーンとNFCやRFIDと呼ばれる「ICタグ」の技術を掛け合わせて①真贋証明・ブランディング、②入出荷・在庫管理の課題解決ができるサービスです。
※真贋証明:商品が本物であると証明する行為やシステム。模倣品対策や消費者の信頼確保のために重要です。
※ICタグ:ICチップを内蔵したタグに非接触で情報の読み書きができる技術。



【真贋証明・ブランディング機能に関して】
SHIMENAWAは、商品にNFCタグを装着し、手に取った消費者にスマートフォンでタッチしてもらうことで様々な情報を伝えられる仕組みです。
NFCタグを商品ひとつ一つに着けることで、複製できない「固有ID」で商品ひとつ一つを管理できるようにしています。この「固有ID」に改ざんできないとされるブロックチェーン上で証明情報を紐付けて記録することで、「証明情報」と「商品」を強固に紐づけ、唯一無二の真贋証明を実現しています。
開封の有無を検知する機能も持たせたNFCタグもあり、商品が未開封・未使用であることをスマートフォンの画面上で判別できます。これにより消費者により安心して「本物」を手に取っていただくことができます。





また、NFCタグの直感的に情報を取得できる利点を活かして、トレーサビリティ情報や商品・生産者に関する情報をちょっとワクワクした特別感のある形で伝えられます。
ものの溢れる現代において、どこでどのような人がどのような拘りを持って作ったのか、商品の背景を購買の判断軸の一つと捉える人も増えており、購買やファン化の一助を担います。
企業にとっては「商品」がお客様との接点となり、商品自体や企業の魅力を伝えてくれる、新しいマーケティング方法にもなり得ます。



【入出庫・在庫管理機能に関して】
非接触でRFIDを読み取り、入出庫や棚卸しを行うソリューションです。RFIDは馴染みのあるところでは洋服や本のお店でもレジや万引き防止として採用されており、体験したことのある方も多いのではないでしょうか。
サービスを利用することでシステム上で在庫の管理を行う、人の手では時間がかかり差異も生じやすい棚卸の作業を効率化することが叶います。
ーーー(編集部)SHIMENAWAはどのような活用が可能ですか?(ブランディング・入出荷・在庫管理に関して)



【ブランディングの観点から】
「模倣品」「真贋証明」と言われてピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。繊細で完成度が高く、かつ遊び心のある日本のものづくりは世界でも注目されていますが、一方でそのブランドの名を借りて勝手に商売をしたり、クオリティの低い模倣品が作られ流通することでブランドの信頼が損なわれたりするケースもあります。
そうした状況に対抗する手段として活用いただいています。



商品の開封の有無を確認できる点もSHIMENAWAの特徴です。開封した後のみ表示される画面もあり、開封した人=実際に買ってくれたロイヤリティの高いお客様に対してのみ特別な体験を提供できます。特設サイトに誘導したり、NFT(ノンファンジブルトークン)という形でデジタルアートをプレゼントしたり、当たり付きの企画をしたり、楽しい提案をしながら自社のファンを育てている企業もあります。



真贋証明だけでなく商品や生産者にまつわる情報も伝えられる点がSHIMENAWAの利点です。
印刷物であれば一度刷ってしまえば固定の情報になってしまいますが、システムからすぐに更新ができるので、季節ごとに異なるペアリング情報を更新してより手元にあるお酒を楽しんでもらえるご提案をしたり、作家さんの活動をお便りのように追加し継続的なコミュニケーションをとっていったり。商品に対する共感が生む工夫をしながら情報発信をしています。





【在庫管理の観点から】
在庫にRFIDタグをつけ、それを読み込むことで出入荷の管理や、時間を費やす企業が多い棚卸を一瞬で完了することができます。
お酒を扱うメーカーさんでの取り組みが先行していますが、お酒の在庫は酒税法の都合でラベルを貼れないまま瓶貯蔵をしており、一本一本のお酒の識別と在庫管理を兼ねて対応できる点が喜ばれている点です。またRFIDは水に弱いと言われますが、検証を繰り返し比較的水に強いものを用意しています。
お酒の他にアパレルやお菓子、穀物、建築資材など様々なご相談を受けています。
SHIMENAWAによる国際的な問題の解決と導入ハードルを下げる試み
ーーー(編集部)SHIMENAWAは何がきっかけで誕生しましたか?



ブロックチェーンの社会実装を考えていた時に輸出を見据えたお米の業者に出会いました。
品質・安全性にこだわったお米を作っていたものの、海外に自分たちのお米を持って行こうとした際に「日本のお米は農薬が多く使われている」と一緒くたにされてしまいました。
ブロックチェーンを使い自分たちが作ったこと、基準を満たしていることを証明することができないかとトレーサビリティでの活用を目指すようになりました。



その後、輸出に際して偽物に頭を悩ませている日本酒の酒造との縁があり、開封の有無がわかるICタグの開発をするに至ります。
この酒造の看板商品の銘柄はアメリカや中国の飲食店で30万円近い値がつきますが、中身をすり替えたり、ラベルや瓶を真似た偽物が出回っていたりしたのです。
自社の銘柄を借りて勝手に利益を得ることはもちろん問題ですが、質の悪い偽物の影響を受け銘柄の評価が下がってしまうことが問題です。そして一度ブランドに傷がつくと払拭していくことはなかなか難しいのです。
このような課題を解決するためにブロックチェーンの透明性・改ざん不可能性を活かした「真贋証明」を開発していったのです。


ーーー(編集部)開発の過程で特にこだわった点や、最も困難だった技術的な挑戦があれば具体的なエピソードを教えてください



最も大きな挑戦は、SHIMENAWAの根幹でもあるCordaを使いながら、消費者がNFCタグをタッチした瞬間にリアルタイムで情報を表示させることです。
Cordaなどの分散台帳技術(DLT)は改ざん不可能性や透明性といったセキュリティ面で優れている一方、処理速度の面では課題があります。消費者の方がスマートフォンでタッチした時に待たされることなく情報が表示されなければ体験として成立しませんから、このセキュリティと性能の両立には特にこだわっています。
何度も検証を重ね、DLTの利点を損なわずに快適な表示速度を実現できる仕組みを作り上げました。



また、導入企業様がプログラミングなしで消費者向けサイトのデザインをカスタマイズできる機能にもこだわっています。
背景色や文字色、ロゴなどを企業様のブランドに合わせて変更したいというご要望はSHIMENAWA稼働当初からいただいていたのですが、当時はエンジニアが一つ一つページを作成する必要がありました。
それを管理画面にて企業様が登録した内容がリアルタイムで消費者向けサイトに反映される仕組みを構築しました。システム設計上様々な工夫が必要でしたが、この機能により企業様が自社らしい体験を消費者に届けることができるようになり、SHIMENAWAの導入ハードルを大きく下げることにつながっていると思います。
インタビューの後編はこちら↓↓
「「日本の本物を、正当な価格で世界へ」SBIトレーサビリティが語る、熱い想いと導入事例」

