岡山県真庭市の「NFTを活用した地域資源活用事業実施業務」から生まれた「ネイチャーダオ真庭3100」。
この記事では、プロジェクトの中核である蒜山自然再生協議会会長である、日置会長に対して、本プロジェクトへの背景や想いについて伺っていきます。

Yoshiyuki Hioki
日置 佳之
蒜山自然再生協議会 会長
1957年東京都生まれ。東京農工大学(農学部環境保護学科)卒業、信州大学大学院修士課程(農学研究科森林工学専攻)中退。1981年から12年余り東京都庁に造園職の公務員として勤め、多摩ニュータウンの緑道整備、伊豆大島の公園整備、秩父多摩国立公園の保護管理、多摩地域の保全地域の管理など業務に従事。1993年から7年余り、建設省土木研究所(現:国土交通省国土技術政策総合研究所)の主任研究員として、公共事業に伴う自然環境の保全・再生に関わる研究を行う。2001年鳥取大学農学部助教授、2007年より同大学教授。2023年4月同大学名誉教授。専門は「人間が壊した生態系を治す技術について研究する」生態工学。著書に『自然再生』『景観生態学』(いずれも分担執筆)など。2003年、「湿地生態系の復元のための環境ポテンシャル評価に関する研究」で日本造園学会賞(論文賞)、2011年「自生種・地域性種苗を用いた生物多様性緑化」で日本緑化工学会技術賞を受賞。2022年からは蒜山自然再生協議会長として、蒜山高原の半自然草原・湿原とそこに生育する絶滅危惧種などの保全・再生に取り組んでいる。博士(農学)、技術士(環境部門)、1級造園施工管理技士、樹木医、森林インストラクター、SAJスキー1級。2023年、自然環境保全環境大臣表彰、2025年緑化推進運動者内閣総理大臣表彰。

Yoshiyuki Hioki
日置佳之
蒜山自然再生協議会議長
1957年東京都生まれ。東京農工大学(農学部環境保護学科)卒業、信州大学大学院修士課程(農学研究科森林工学専攻)中退。1981年から12年余り東京都庁に造園職の公務員として勤め、多摩ニュータウンの緑道整備、伊豆大島の公園整備、秩父多摩国立公園の保護管理、多摩地域の保全地域の管理など業務に従事。1993年から7年余り、建設省土木研究所(現:国土交通省国土技術政策総合研究所)の主任研究員として、公共事業に伴う自然環境の保全・再生に関わる研究を行う。2001年鳥取大学農学部助教授、2007年より同大学教授。2023年4月同大学名誉教授。専門は「人間が壊した生態系を治す技術について研究する」生態工学。著書に『自然再生』『景観生態学』(いずれも分担執筆)など。2003年、「湿地生態系の復元のための環境ポテンシャル評価に関する研究」で日本造園学会賞(論文賞)、2011年「自生種・地域性種苗を用いた生物多様性緑化」で日本緑化工学会技術賞を受賞。2022年からは蒜山自然再生協議会長として、蒜山高原の半自然草原・湿原とそこに生育する絶滅危惧種などの保全・再生に取り組んでいる。博士(農学)、技術士(環境部門)、1級造園施工管理技士、樹木医、森林インストラクター、SAJスキー1級。2023年、自然環境保全環境大臣表彰、2025年緑化推進運動者内閣総理大臣表彰。
デジタルを活用した自然との新たな関わり方
ーーー(編集部)フサヒゲルリカミキリを起点とした自然保全の取り組みを、このように“デジタル”の力と掛け合わせたことについて、どういった意義を感じておられますか?
これまで私たちが取り組んできた自然保全活動は、現地に足を運んだ方や関係者に限られていた面もありました。
今回、3DモデルやNFTといったデジタル技術を活用することで、地域の外にいる方々にも私たちの活動やその背景にある自然の魅力を知っていただける体制を整備しました。
こうした新しい手段を通じて、保全活動が広く社会とつながる可能性が生まれたという点に、大きな意義を感じています。
ーーー(編集部) デジタル標本という新しい形式にはどんな期待を込められましたか?
デジタル標本を所有するという形が、新たな自然との関わり方を提案するものになるのではと考えています。
たとえば、これまでであれば昆虫標本は「採って、保管する」というものでしたが、デジタルであれば採集を伴わずにその魅力を楽しむことができます。
そうした「採らない所有」の選択肢が広がることで、昆虫採集の抑制にもつながり、希少種の保護にも寄与することが期待できると考えています。
ーーー(編集部)山焼きのような伝統的な手法と、NFTや3Dモデルといった新しい技術を共存することについてはどのようにお考えでしょうか?
もともと、伝統的な技を使う保全手法と、NFTや3Dモデルのような新技術は、矛盾したり競合したりするものではないと考えています。
私たちとしても、それらは共存可能であり、それぞれが保全活動における異なる役割を果たせると考えています。

前例がないからこそ慎重な情報発信に努める
ーーー(編集部)NFTというまだまだ浸透していない技術を活用することに対して、広報という側面で協議会としてどのような調整や工夫を意識されましたか?
今回のように、「環境保全活動への支援を目的に絶滅危惧種の3Dモデルを販売する」という取り組みは、恐らく前例がなく、非常に注目を集めやすいものでした。
そのため、フサヒゲルリカミキリの危機的な生息状況や、私たちが取り組んでいる保全活動について、生態学的な事実や活動の実態と矛盾がないように、かつできるだけ誤解を生まないようにお伝えする必要がありました。
その点を踏まえ、WEBサイトやプレスリリースなどの情報発信内容には、かなり腐心し、慎重に構成を行いました。
ーーー(編集部)さまざまな関係機関(行政・民間・地域住民)と連携する上で、協議会の立場として特に重視した点や、難しかった点があれば教えてください。
今回のプロジェクトでは、「国内希少野生動植物種」であるフサヒゲルリカミキリの3Dモデルを作成し、それをNFTとして販売するという、恐らく国内初となる事例に取り組むことになります。
このような前例のない試みは、環境保全と法制度の整合性を慎重に扱う必要があり、「種の保存法」との兼ね合いや、環境省として標本を貸し出すという判断に至るまでの省内調整には相当な困難があったものと想像しております。
ーーー(編集部)特に印象に残っている支援や連携のエピソードがあれば教えてください。
そのような中で、環境省の中国四国地方環境事務所の皆様とは、フサヒゲルリカミキリの保護増殖事業を管轄されているという関係性もあり、当初から密に連絡・調整を行うよう努めてまいりました。
また、関係機関との日常的なつながりとしては、環境省や大山隠岐国立公園管理事務所の皆様には、当会の総会にご出席いただいたり、山焼き・草刈りといった現地活動にもご参加いただいたりと、継続的なご協力をいただいております。
最終的に、NFT販売という形でプロジェクトが実現に至ったのは、そうした日頃の連携や、環境省内での丁寧な調整のおかげです。この場をお借りして、深く感謝申し上げます。




「フサヒゲルリカミキリ」モデルから全ての希少種へ

ーーー(編集部)今回のような取り組みが、今後の蒜山地域や他地域に広がっていく可能性について、どのように期待されていますか?
他の希少昆虫類や野草についても、今回のようにデジタル標本を作製・販売することができれば、保全活動そのものがより加速していくのではないかと考えています。
また、他地域への普及についても、まずは今回のプロジェクトの成果をしっかりと見極めた上での判断にはなりますが、可能性は十分にあると感じています。
ーーー(編集部)最後に、このプロジェクトを通して感じたこと、また協議会としての思いや、地域内外へのメッセージがあればお聞かせください。
このプロジェクトを通して、蒜山自然再生協議会が取り組んでいる自然再生の活動は、単なる保全活動にとどまらず、多面的な要素を持っているということを、多くの方に知っていただけたのではないかと感じています。
私たちの活動が、自然と人との新たな関わり方を考えるきっかけとなり、今後の地域づくりや環境保全の在り方に少しでも貢献できれば嬉しく思います。
日置会長、ありがとうございました!
引き続きよろしくお願いいたします!!