【線路✖︎NFT】ひと味違う所有体験を実現「レールメモリアルNFT」|2年以上運営してきて感じるJR九州にとってのNFTとは

JRだからこそのアセットを活用したNFTと独自マーケットプレイスを展開するJR九州NFT
そんなJR九州NFTでは、実際に使用されていた線路を特別な形で提供する「レールメモリアルNFT」の販売を開始しました!

この記事ではJR九州NFTプロジェクトのファウンダーである牛島さんに、今回の取り組みとこれまで2年間運営してきて感じることや考えることについて詳しくお話を伺っています!

牛島 卓二
JR九州 事業開発本部

JR九州NFTプロジェクト
プロジェクトファウンダー

インタビュイー

大学卒業後にJR九州入社。入社後は、商業施設開発・店舗開発等の開発業務のほか、商業施設運営・リーシング・販促等の運営業務も経験。ベーカリーの店舗開発・店舗運営などの小売業などにも従事。2021年より現職にて、JR九州グループ企業のDXのバックアップおよびデータ分析業務を担う中で、新領域としてデジタルを活用した施策の検討を開始。メタバースやゲーム等の施策も実施しながら、2023年より「JR九州NFT」プロジェクトにてNFTの販売・配布をスタート。 Web上で取得可能な“販売”と、実際のご利用に対する「記念」「証明」としての“配布”に加え、保有することが“インセンティブ”につながるという構想で「JR九州NFT」プロジェクトを推進中。 ブロックチェーン・NFTの活用により、お客さまと多様な接点を築くとともに新しい価値や九州の楽しみ方を提案しつつ、Web3.0のマスアダプションを目指す。

インタビュイー 牛島 卓二
JR九州 事業開発本部 JR九州NFTプロジェクト プロジェクトファウンダー

大学卒業後にJR九州入社。入社後は、商業施設開発・店舗開発等の開発業務のほか、商業施設運営・リーシング・販促等の運営業務も経験。ベーカリーの店舗開発・店舗運営などの小売業などにも従事。2021年より現職にて、JR九州グループ企業のDXのバックアップおよびデータ分析業務を担う中で、新領域としてデジタルを活用した施策の検討を開始。メタバースやゲーム等の施策も実施しながら、2023年より「JR九州NFT」プロジェクトにてNFTの販売・配布をスタート。 Web上で取得可能な“販売”と、実際のご利用に対する「記念」「証明」としての“配布”に加え、保有することが“インセンティブ”につながるという構想で「JR九州NFT」プロジェクトを推進中。 ブロックチェーン・NFTの活用により、お客さまと多様な接点を築くとともに新しい価値や九州の楽しみ方を提案しつつ、Web3.0のマスアダプションを目指す。

目次

線路 ✖︎ NFT「レールメモリアルNFT」とは

ーーー(編集部)「レールメモリアルNFT」で販売されるレールの個数や価格、そして付与されるNFTの詳細についてまずは教えてください!

JR九州 牛島

レールメモリアルNFT」は、実際に使われていたレールを特別な形で提供するNFTです。 
30個限定で販売しており、価格は税込み20,000円です。 
これはただのレールではなく、実はJR九州最大の駅である博多駅の構内で実際に使用されていた本物のレールなんです。

販売開始時点(2025年8月20日)では現役で使われていたものですが、現在は新しいレールに交換されています。 

JR九州 牛島

このレールの実物を、購入者の方には特別なNFTと一緒にお届けします。 
まず、ご購入いただいた時点でお渡しするのは、“使用されていたときの様子”の画像NFTです。

これは、どこでどのように使用されていたかを確認することができる画像であるとともに、実物のレールをお届けするための購入者証明の機能を持たせています。

JR九州 牛島

さらに付加価値となる体験として、後日開催予定の「レール切断イベント」にご招待します。このイベントでは、皆さんの目の前でレールを薄いスライスに切断する予定です。レールは1cmで約500gなので、意外と重いんだなという経験もしていただけるかと思います。なお、この実物レールと一緒に、レールが使用されていた期間や場所などの情報をブロックチェーンに記録した、実際に使用していたということを証明するNFTをお渡しする予定です。 
 
つまり、購入者は単なる実物のレールを保有するだけではなく、レールにまつわる歴史や手元に届くまでの過程を体験できるというストーリー性を感じられるものになっています。そしてそのストーリーは、NFTによる記録・証明が加わることでさらに特別な体験に仕上がっていくというわけです。 

ーーー(編集部)”線路”を販売するというユニークな今回のNFT。なぜ数ある鉄道資産の中から「レール」を販売するに至ったのですか?企画の背景や着想についてお聞かせください。

JR九州 牛島

弊社の鉄道資産の中で、鉄道に関心が高い人もそうでない人にも興味を持っていただけるような「ひと味違う所有体験」につながるものは何か、ということを考えました。 

車両についていた部品、というのももちろん販売対象として検討しているのですが、数も限られますし、部品を外せるタイミングにも左右されます。 

JR九州 牛島

ところが、レールであれば、九州内のいたるところで交換が予定されていることから数や場所等の選択肢を確保できますし、もし「現役」時(使用している状況)に販売できれば、そこに行けば自分のレールが使われている。自分のレールが人々の暮らしを支えているという特別な体験もご提供できると考えました。

もちろん、レールそのものも、歴史を感じられる貴重なアイテムとしての魅力があると思っています。 

ーーー(編集部)これまでにも交換予定のレールを一般販売するという取組みはあったのでしょうか?(NFTを掛け合わせるなどに限らず)

JR九州 牛島

レールの実物を記念品として用意するといったことはあったかと思いますが、「現役」の状態で販売し、後日実物が手元に届いたり、特別な体験がセットになるという取り組みはないのではないかと思います。

(他社さまの事例はリサーチできておりませんが、弊社では初めての取り組みです。) 

レールとNFTでひと味違う『所有体験』の実現

ーーー(編集部)今回の取り組みにおいて、NFTはどのような役割を果たすと考えていますか?

JR九州 牛島

今回の取り組むにおいてNFTは「ただのレール」を「思い入れのあるレール」に変える、ひと味違う所有体験を提供する役割を果たすと考えています。
 
「このレールは古いのかな? どこにあったのかな?」など、レールについて深く知りたいというファンニーズが存在するのではと仮説を立てており、その結果、場所や歴史の証明書をつけることで新しい体験をしていただく仕組みを考えました。 

JR九州 牛島

体験の実現には、NFTは記録・証明に親和性が高いという特徴を活用して、来歴証明・所有証明としての役割のために、NFTと組み合わせました。 

ーーー(編集部)この企画を通して届けたいターゲット像、どのような方々に購入していただきたいと考えていますか?

JR九州 牛島

メインは鉄道ファンの方になると思っています。

鉄道好き、レール好きな方に関心を持っていただきたいのはもちろんですが、今回の対象レールがある場所でもある「博多駅」に思い入れがある方にもぜひお買い上げいただければと思います。

ーーー(編集部)購入者限定の「レール切断イベント」というユニークな企画ですが、どのような思いが込められていますか?

JR九州 牛島

出来上がったものをお楽しみいただきたいのはもちろんですが、ぜひ、「手に届くまでの過程」の1つを特別な体験として楽しんでいただければと思います。

ーーー(編集部)現在の販売状況を教えてください!(2025年9月8日時点)

JR九州 牛島

10月8日時点で23個です。(残り7個!)

2年以上運営してきて感じる『構想設計』の重要性

ーーー(編集部)2023年7月にオープンしてから2年。これまでの取り組みで一番の成功と感じているのは何ですか? NFT販売やデジタルスタンプラリーなど、これまでの様々な取り組みの中で、牛島様ご自身の主観で「これは成功だった」と感じていること、そしてその理由を教えていただけますか?

JR九州 牛島

実施してきたそれぞれの企画にユーザーの皆さまが付いて来てくださっており、他社さまとのコラボレーションを数多く実施できていることから、いつも感謝と成功の実感があるのですが、「一番の成功」とするなら、本プロジェクトの構想設計でしょうか。

NFTに初めて触れたのが2022年5月頃で、2023年5月にNFTへの着手を発表したのですが、その間に立てた構想は、今もほぼ形を変えていません。当時から、体験価値を高め、楽しみを生み出すためのツールとしてNFTを活用し、ファンコミュニケーションツールを目指した位置づけとして取り組むことを決めていました。

JR九州 牛島

3年ほど経過した今も方針転換することなく、一貫した取り組みを行えていることは幸運でもありますが、投機・収益性といった使われ方ではなく、証明・記念といった揺らぐことのない機能面の強みにフォーカスを当てて構想を設計したことが、RWA含む数々のチャレンジに奏功しているのではないかと感じています。

ただ、まだ構想の中にあるのに実現できていないことも数多くあります。

↓過去の取組み等に関してはこちら↓

ーーー(編集部)逆に、これまでの取り組みで感じている課題は何でしょうか?

JR九州 牛島

一番大きな課題として考えているのは、ユーティリティの提供です。

現地での配付や通販としての販売、現地でのみの販売など、手に入れていただくための仕掛けはいろいろと実施してまいりましたが、NFTを持つ意味・持っていることで受けられるメリットの部分では期待に応えられていないと考えています。

JR九州 牛島

ファンコミュニケーションツールとしての存在を目指している以上、弊社にポジティブな感情を抱いていただいている状態で、さらにエンゲージメントを高めるような取り組みに進化していかなければならないという危機感とともに施策を検討しています。

何のためにWeb3に踏み込むのか、NFTを活用するのか

ーーー(編集部)これまで2年間の運営を経て、他の企業がNFT事業に参入する場合に考えるべきことや、ポイントはありますか?知見不足や社内調整などの観点でもあれば教えていただきたいです。

JR九州 牛島

他社さまが今後参入を検討される際の課題、という点でお答えするならば、一番重要なのはやはり何のためにNFTを活用するのか、その領域に足を踏み入れるか、という目的の部分ではないでしょうか。

ブロックチェーン等を活用するWeb3領域に携わる皆さまが感じていることだと思いますが、「これは従来のシステム(Web2)では実現できないのか」という問いに、常に向き合い、戦い、自問自答しています。

JR九州 牛島

Web2で実現するのにわざわざWeb3に踏み込む必要があるのか」ということは社内外で必ず問われることになると思います。
そこに想いや信念、挑戦意欲などを乗せて回答するとともに、Web3はあくまでも手段に過ぎない前提で事業構想に組み込むといった組み立ては必要ではないかと思います。

個人的な見解ですが、目的が「Web3 readyな企業になる」というようなものでない限り、Web3にフォーカスを当てた説明をするような場面は、議論を難航させるような気がしてなりません。

ーーー(編集部)国内事業者のNFT事業に参入する動きが落ち着いてきていますが、JR九州さんとしては現状をどのように捉えていますか?また、他社事例も踏まえ、今後NFT事業を推進する上で、どのような価値付けをしていくことが重要であるとお考えですか?

JR九州 牛島

今までは「NFT」「Web3」ということがアピールポイントになっていたと思いますが、今は「インフラとしてのWeb3」「ツールとしてのNFT」という存在感が好まれているのではないかと感じます。

インフラになっていくことで目立たなくなるという面もありますが、その分、弊社含め関わり続けている事業者の皆さまは、より深く活用法を検討している状況が伺えます。決してダウントレンドにあるとは思っておりません。

JR九州 牛島

今後も「NFTだから」という仕掛けではなく、「プラスアルファの体験を実現しているのがNFTだった」といった、体験価値・楽しみ・驚きといった付加価値の提供を目的とした取り組みが重要だと考えます。

ーーー(編集部)最後にPRなどがあれば教えてください!

JR九州 牛島

JR九州NFTプロジェクトを開始して3年目に入りました。
サービス面でもエンタメ面でもバージョンアップしていかなければならない時期だと考えています。 

これまでの2年間の中でも、20あまりの皆さまと企業間連携等の企画を実施してまいりましたが、まだまだコラボレーションによるシナジーの創出が可能ではないかと思います。

話題作り・規模拡大・相互送客等、いろいろな切り口でコラボレーションを検討したいと思いますので、ぜひ九州に関心のある方(弊社にご関心を寄せていただける方も!)はご相談いただければと思います。 

JR九州 牛島

また、WEB3とツーリズムを絡めたプロジェクトも日本WEB3ツーリズム協会さま・テレビ朝日さまと立ち上げ、パートナーを拡大しながら事業化を進めております。
(IVS・WebXでもサイドイベントを開催いたしました。)

暗号資産決済による体験型旅行販売を目指す取り組みの方にもご興味がある方はお知らせください! 

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