第一回目フィールドワークレポート@真庭市|豊かな自然が作り出す生態系・産業の一貫性

株式会社ICHIZEN HOLDINGSは、岡山県真庭市と「NFTや3D等デジタル技術を活用した真庭市特有の自然・文化の保護及び持続的な利用」に向けた取り組みを開始し、2023年8月に真庭市にて第1回目のフィールドワークを行いました。

この記事では、8月の第1回目のフィールドワークに関するレポートです。
どのような目的でフィールドワークを実施したのか、公表できる範囲内で具体的な行動内容・学びを記しています。

このレポートが少しでもWEB3・NFT技術を活用した地方創生の取り組みに寄与できれば幸いです。

目次

岡山県真庭市とのNFTにおける取り組みについて

今回のフィールドワークは、2023年5月に真庭市によって実施された「NFTを活用した地域資源活用事業実施業務」の公募プロポーザルによって採択された事により、フィールドワークを行う運びとなりました。

このフィールドワークの目的は、真庭市においてNFTを活用していくにあたり、市内にはどのような資源(自然資源・文化資源・観光資源)があり、NFTとどのような面で相性がよいか、現状の課題はどのようなものがありそれに対してNFT等デジタル技術で解決できることはないかというのを調査するために実施しています。

このフィールドワークを踏まえて、真庭市におけるNFTを活用した事業案を策定していきます。
フィールドワークは、これ以降あと2回(10月・12月)実施予定です。

【第1回目】フィールドワーク全体図

8月の第1回目のフィールドワークでは、「真庭市を幅広く知り、社会的意義のある企画を模索する」というテーマの元実施しました。

真庭市には何があり、どのような仕組みで成り立ち、何が上手くいっていて、何が上手くいっていないか、これらを構造的に理解しNFT等デジタル技術を用いて課題を解決したり、より良くする方法を洗い出すことを目的としてます。

今回のフィールドワークは、8月の21日〜26日で実施をしており、主に以下の場所を視察しました。

視察場所(真庭市内)
  • 蒜山ひととき
  • GReeNable HIRUZEN
  • 蒜山郷土博物館
  • 勝山町並み保存地区
  • 真庭市立中央図書館
  • 河野酢味噌工場
  • 塩釜冷泉
  • がま細工職人宅&がま養殖場
  • 津黒いきものの里
  • 湯原
  • はんざきセンター
  • 不動の滝
  • 蒜山草原
  • 三平山
  • ひるぜん夏恋祭り
  • ひるぜんジャージーランド
  • ひるぜんジョイフルパーク

1回目のフィールドワーク全体を通しての所感・学び

今回のフィールドワークで得た大きな学びとしては、平澤さんがインタビューでも答えているように「自然があるからこそ、社会そして経済というものがある」という事、そして真庭市のポテンシャルは非常に高いという事です。

真庭市は非常に自然が豊かです。特に水は全国的にも水質が良く、遠方から水を汲みにきたり、その水を使うために移住したりと非常に注目されています。

自然というものが根底にあり、その自然の豊かさによって特有の生態系が育まれ、飲食店が栄え、特産品が生まれ、自然が真庭市の営みを大きく支えています。
今回のフィールドワークでは、歴史的にも政治的にも実践的にも真庭市に関する知見を身につけたことで、NFT等デジタル技術というものを全てを支える自然に対して活用していこうと考えています。

また、真庭市は人口が5万人弱と少ないですが、自然資源・観光資源等ポテンシャルは非常に高いです。
デジタル住民票や外部パートナーなど関係社・関係人口を増やす事ができれば、大きなインパクトとなる為、この部分に関してもNFT等デジタル技術を用いて活性化させていこうと考えています。

フィールドワークにて視察場所と学び

以下は、今回フィールドワークにて視察した主な場所についてです。ここからは、それぞれ訪問理由や学びを記しています。

視察場所(真庭市内)
  • 蒜山ひととき
  • GReeNable HIRUZEN
  • 蒜山郷土博物館
  • 勝山町並み保存地区
  • 真庭市立中央図書館
  • 河野酢味噌工場
  • 塩釜冷泉
  • がま細工職人宅&がま養殖場
  • 津黒いきものふれあいの里
  • 湯原
  • はんざきセンター
  • 不動の滝
  • 蒜山草原
  • 三平山
  • 蒜山自然再生協議会総会
  • ひるぜん夏恋祭り
  • ひるぜんジャージーランド
  • ひるぜんジョイフルパーク

蒜山ひととき

蒜山ひとときは、世界的な建築家の隈研吾氏がデザインしたシェアオフィスです。
この施設には、真庭の木材や自然素材が利用されており、落ち着いた仕事スペースはもちろん、蒜山の自然や文化について知ることができる学びのスペースもあります。

当該施設には、真庭地域おこし協力隊の千布さん(ちぶ)とお会いしに訪問しました。
千布さんは、蒜山の自然・草原を守る第一人者です。現在、蒜山の自然・生き物に関する調査や登山道の修復など多岐に渡って活動されています。小林さんのインタビューにもあるように、蒜山の自然を楽しむために動いてくださっている方代表です。

蒜山ひとときでは、千布さんから蒜山の自然のこれまでと現在についてを山焼きや環境変化といった、文化・自然・経済の動きで教えていただきました。山焼きによって美しい草原が保たれ、それによりフサヒゲルカミキリなど希少な生き物が栄え、また人々がかやを採取してお金にすることができるというサイクルが成り立つ。

フィールドワークで最初の訪問であったこの場所で、蒜山の自然について体系的に学び、NFT等デジタル技術の活用方法について千布さんとも意見を交わすことが出来ました。

GReeNable HIRUZEN

GReeNable HIRUZENは、建築家の隈研吾氏が監修した施設であり、サステナブルの価値をより多くの人に知ってもらう為の発信拠点施設です。
サステナブルを実践できるグッズを販売したり、芸術文化を発信するミュージアムがあったり、サイクリングセンターがあったりと様々な形式でサステナブルについて発信しています。

GReeNableには、テーマがサステナブルということからもそれを実感するために訪問しました。また、千布さんからもお話に聞いていた茅を建築に利用したサイクリングセンターがあるとお話を伺っていたのもあり、実際に見学しにいきました。

GReeNableでは、見学した茅を用いたサイクリングセンターは実際に見学すると圧巻の迫力があるもので、GReeNableの職員の方からもどのように建築されていったのか、どれくらいの真庭の材料が使われたかといった話を始めとした、サステナブルな取り組みについてお話を伺いました。

広大な敷地に大きなパビリオンやセンターの存在、そして人の賑わいから真庭市として”サステナブル”というものに取り組む姿勢そしてそれによる人の誘致の可能性を感じとる事が出来ました。

蒜山郷土博物館

蒜山郷土博物館は、真庭市の蒜山地域の歴史と文化を紹介する施設です。国重要無形民俗文化財の大宮踊りに関する映像資料や切り絵のシリゲが飾ってあったり、古墳群が隣接されていたり、郷原漆器があったりと蒜山の歴史を体感する事が出来ます。

蒜山郷土博物館には、歴史的に蒜山という自然豊かな場所を学ぶために訪問しました。
訪問時には、館長である前原茂雄さんに資料を見ながら説明をしていただきました。

実際に資料を見ながら館長のお話を聞く事で、昔はどのような生活を蒜山の人々はしていたのか、その営みにおける大宮踊りやシリゲといった文化財の重要な役割、現在にも続く風習、現代の技術の発達や人口減少・高齢化によって見られなくなった風習とそれによる弊害、そしてどのような自然の課題がありどのようなところにデジタル技術をの活用が望まれているかについて体系的に学ぶ事が出来ました。

歴史的背景から学び、何にNFT等デジタル技術を活用すべきか、どのような仕組みであれば地元の人から受け入れられやすいか、ということを考える上で大きなヒントをもらう事が出来ました。
余談ですが、蒜山郷土博物館で切り絵のシリゲ体験セットを購入し、挑戦しました。郷土博物館内に蒜山の小中学生の作品が期間限定で展示されていますが、実際に挑戦した身からすると正直どの作品にも敵わない程に上手でした。地域の伝統・文化というものの伝承についても身をもって感じる事が出来、今後の時代どのように受け継いでいくべきか・できるかという事に関しても大きなヒントを得られました。

勝山町並み保存地区

勝山町並み保存地区は、出雲街道の宿場町・城下町として栄えた町であり、昭和60年に岡山県初となる「町並み保存地区」に指定されました。昔ながらの酒蔵に、旧家、武家屋敷といったノスタルジックな建物に加え、古民家、蔵などを活用した工房、カフェなどが軒を連ねています。

勝山町並み保存地区は、真庭発酵’sの1つ「御前酒蔵元辻本店」があり、真庭市内の有名観光地という点から訪問しました。

実際に辻本店では、この地域の自然が作り出す水だからこそ作れるお酒について、真庭発酵’sの取り組み内容やその裏話など知る事が出来ました。豊かな自然があるからこそ出来る産業というものをより明確に認識し、周り回って自然というのが全て根底にあるというのを実感しました。

また、町並みはもちろん非常によく、NFTを活用した周遊施策にも活用できるということを認識できました。

真庭市立中央図書館

真庭市立中央図書館は、勝山町並み保存地区内にある図書館で、真庭市が取り組んでいるSDGs関連の本など様々な蔵書があります。

中央図書館には、実際に真庭市が取り組んでいるSDGsの取り組みに関する資料を始め、今後のまちづくりや人口増加に関する戦略資料を閲覧するために訪問しました。

インターネットでは見つけることのできない、真庭市の市としての戦略をまちづくり・人口・自然環境それぞれの面で体系的に認識を得る事が出来、行政的視点における課題を認識できました。
今回NFTを通して企画を作る際も、1つの施策の効果が相乗的に出るよう真庭市が向いている方向と同じ方向に沿って計画していきます。

河野酢味噌醸造工場

河野酢味噌醸造工場は、明治21年に創業された味噌・醤油・酢を製造販売している企業です。

河野酢味噌醸造工場は、真庭市内で事業を行う発酵企業で作るチーム「まにわ発酵’s」の一員という事からも実際の事業者の声を聞くために代表の河野さんに自社の商品に加え、まにわ発酵’sの取り組みについてお話を聞きました。

真庭市は、全国的にも珍しい軟水・硬水両方の水源があり、その水を求めて全国から事業を行いたい移住者や商品を求める方が来ます。

多くの発酵食品企業は、一世代前までは互いの酒蔵や手法の公開というのはタブーとなっていました。
ですが、まにわ発酵’sでは、前例のない2種類の水を活用した共同醸造の取り組みや、オンラインでのツーリズムなど様々な取り組みを行っています。

まにわ発酵’sでは、既に非常に良い商品の販売・体験の提供を行っている為、NFTなどの組み合わせ方としては非常に簡単に付け加える事はできると感じました。また、これら事業の根幹はやはり水という自然資源によるものです。その為一番取り組むべきポイントも改めて感じ取る事が出来ました。

塩釜冷泉

塩釜冷泉は、日本名水百選にも認定されており、毎秒300リットル・年中11度前後の天然水が湧き出ます。

塩釜冷泉には、有名観光地という点に加え、実際に真庭の自然の豊かさを感じられるスポットであることから訪問しました。
この冷泉では、源泉から直接水を汲むことはできませんが、ひるぜん塩釜キャンピングヴィレッジのロッジ横から水を汲む事ができます。

訪問した際には、実際に大量の水をトラックで汲みに来る方もいたり、どれだけその水質が良いのかというのを目の当たりにしました。聞いたお話では、関西圏では多くの方がわざわざ水を汲みに来るほど人気であり、様々な食品に使われているようです。

塩釜冷泉に加え、その周辺の森の状態についても学ぶ事が出来、やはり自然資源をいかに保護し持続的に活用できるようになるのかというのが、この市における取り組みのポイントだと実感しました。

がま細工職人宅&がま養殖場

真庭市蒜山地域には、岡山県指定伝統工芸品にも指定されている伝統技術「がま細工」があります。
がまは、防水性・保湿せいに優れており、雪が多く蒜山では昔から必須の生活用具として作られ、使われていました。

そんながま細工について蒜山蒲細工生産振興会の多久間さんからお話を伺い、がまを育てている場所を訪問しました。

いかに1つのものを編み上げるのに手間・時間がかかるかという事や、担い手不足について、またがまに関しては学術的な研究がなく効果的な育成方法が判明していないという事について認識を得る事が出来ました。
がま細工は非常に人気があり、どの商品も完売しており入荷待ちの状況ではありますが、全国的にもここでしか生産されていなかったり、上記のような問題があり構造的に段々と歪みが出始めています。

これら伝統品がある真庭市のポテンシャルの高さを感じ取りながら、多久間さんともどのようにデジタル技術を活用すると良いかという事について議論をする事が出来ました。

津黒いきものふれあいの里

津黒いきものふれあいの里は、16haの里山に広がる自然公園です。
様々な生き物について学ぶ事ができるネイチャーセンターささゆり館や様々な動植物が生息する雑木林や芝生・小川があります。

津黒いきものふれあいの里には、その雄大な自然はさることながら100年以上も前の標本が数多くある事から訪問し、館長の雪江さんからお話を伺いました。

ネイチャーセンターささゆり館内の動植物等の展示物を回りながら、生態系について理解を深める事が出来ました。また、100年以上も前の植物の標本があり、これらに3D技術などデジタルアーカイブに関する事についての議論が出来ました。

自然を楽しむだけでなく、後世にいかに残していくか、また研究をしやすくしていくかという事に関して議論の中で認識を高める事が出来ました。

湯原・はんざきセンター

湯原は、全国露天風呂番付で西の横綱と認められた「砂湯」がある温泉地であり、自噴する温泉が数多く存在する事からも古くから多くの人々に利用されてきました。
はんざきセンターは、半分に割かれても生きているという言い伝えがあるオオサンショウウオを保護する施設です。はんざきセンター内では、この湯原に自然に生息しているエリアで保護されたオオサンショウウオを間近で見る事が出来ます。

これらの場所には、真庭市内の有名な観光スポットという点に加え、ちょうど訪問前日に「湯原温泉はんざき祭り」が開催されていた事からも地域の文化を知るために訪問しました。

今までテレビを通してでしか見ることのなかったオオサンショウウオを間近でかつ当たり前のように見る事ができ、温泉街の雰囲気も相まって真庭市のポテンシャルの高さをひしひしと感じました。
実際に来てもらえればその良さは必ず伝わるだろうとより思えたため、NFT等を活用した施策はいかに集客に寄与できるものかというのがポイントになると実感できました。

蒜山草原・三平山

蒜山草原は、蒜山に広がる雄大な草原です。蒜山地域では800年ほど前から暮らす人々によって「山焼き」が行われてきました。
山に火を入れる事で、キキョウやサクラソウの群落、フサヒゲルカミキリなどの希少種が生息する草原を保ってきました。

また、三平山は蒜山高原の西端に位置する標高1010mの独立峰です。
蒜山自然再生協議会の千布さんをはじめとした多くの方が登山道の整備などを行っています。

これらの場所には、千布さんにどのような自然が広がっており実際にどのような活動をしているのかというのを現地で教えていただきました。

広大な自然の豊かさを実感したことはもちろん、いかに自然環境を楽しむために裏で頑張ってくださっている人がいるのかというのを実感しました。山焼きも含め、いかにNFTを活用してこの自然を守っていけるか、持続的に活用できるようにするかという事について改めて千布さんと議論しながら、考えるヒントを得る事が出来ました。

その他

その他上記に加え、蒜山自然再生協議会の総会に参加させて頂いたり、プライベートで1泊し「ひるぜん夏恋祭り」「ひるぜんジャージーランド」「ひるぜんジョイフルパーク」といった観光地を観光客目線でも楽しみました。

総会では、どのような方々がこの蒜山地域の自然のために尽力しているかというのを実感でき、また活動を続けていくための具体的な数字を認識する事が出来ました。今回のNFTの活用方法としても目安の数字を立てる事に生かしていきます。

また、プライベートでも楽しんだ事で改めて真庭市の観光という面においてもポテンシャルが非常に高いと思いました。
まだまだ活かしきれていないものは多くあると感じた為、どのような外部パートナーなど関係者を増やせるかが鍵になってくると考えています。

第二回目のフィールドワークに向けて

今後フィールドワークは、10月と12月にも行う予定です。

真庭市のポテンシャルの高さ、全ての営みは自然があるからこそ成り立っているという、これらの事を実感するフィールドワークとなりました。

真庭市特有の自然や文化というものをNFTや3D技術を用いて保全し、また持続的に誰もが楽しめる企画を形作れるように第2回・第3回のフィールドワークを実行していきます。

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